ブックタイトルConsultant280

ページ
20/78

このページは Consultant280 の電子ブックに掲載されている20ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

Consultant280

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

Consultant280

特集交通手段?あなたは何で移動する??2都市の交通手段:移動サービスの現状と課題太田勝敏OHTA Katsutoshi東京大学名誉教授一般社団法人日本国際学生技術研修協会/理事長公益財団法人豊田都市交通研究所/所長「より速く、より多く、より便利に、より安全に」と交通手段はどんどんと発展し、世の中には多くの交通手段が存在する。それら交通手段を人は自由に選択し、利用する。現在の交通手段はどんなものが多く利用されているのだろうか、世界ではどんなものが流行っているのだろうか。交通手段の現状を知る。交通手段は一般に自動車、バス、鉄道といった移動、ヒトやモノの輸送に使う交通具を意味している。20世紀以降、都市交通分野では自動車交通を主体に経済社会が大きく発展してきた。しかし、車依存社会といわれるような過度の車利用が道路交通事故の多発、世界で毎年124万人以上とされる事故死者の発生、一向に改善されない大都市の交通渋滞問題、健康被害につながる排気ガスによる大気汚染、そして内燃機関による温暖化ガス排出と気候変動問題など、大きな課題に直面している。本稿では、都市の旅客交通を中心に交通手段の使われ方についてわが国および世界の現状、そして、自動車交通問題への対応として公共交通などの代替交通手段について、自動運転関連のICT技術を使った案内アプリでのカーシェア、サイクルシェア、そしてライドシェア、更にMaaS(Mobility as a Service:統合移動サービス事業)といった魅力的な新しい移動サービスの開発・導入が進んでいること、その意味で交通をめぐるエコシステムが大変革期にあること、この背景には、交通具としての自動車というモノからその提供するコト、移動サービスへの価値観の変化があることを紹介する。都市交通手段の利用状況私たちの日常の生活は住む、働く、憩うの三つの基本的活動で成立するとされており、それらの活動が行われる住宅、オフィス・工場、娯楽施設・レストラン・公園など市内各地に展開する施設・空間(土地利用)を相互に結ぶものが交通である。政策課題は通勤・通学、業務、買い物、通院などの移動目的のための移動サービスを市民のすべてに安全に、便利に、効率よく安価に供給することである。モータリゼーションが進んだ現在の課題は、自動車への過度の依存により、交通渋滞、道路交通事故、大気汚染と健康問題、化石燃料使用による地球温暖化ガスの排出などに拡大している。また、自動車の利用可能性による経済格差問題、公共交通の衰退と移動弱者の社会参加問題など、広範な社会問題になっている。このような自動車依存社会の問題は世界でも“持続可能な発展”の重要課題として認識されている。ここで、日本の都市における自動車の使われ方を中心にした利用状況を全国パーソントリップ・データで見てみよう(図1)。全国の平日でみると、自動車が45.1%と最大であり、次いで徒歩が19.5%、鉄道が16.5%、自転車が13.8%と10%以上であるのに対して、バスと自動二輪車は2%台である。地域別にみると三大都市圏と地方都市圏で使われている交通手段に大きな違いがあることがわかる。特に、自動車についてみると地方では6割に対して、三大都市圏では3割強であり徒歩・自転車よりも少ない。代わりに鉄道が3割弱で最大となっている。地域差については、更に詳しく見ると中心都市と周辺都市で違いがあり、周辺都市では自動車の分担率が大きくなっており、三大都市圏の郊外都市では7割程度が自動車となっている。ここで注目されるのは、身近にあって活動的な交通手段である徒歩・自転車は地域差が少なく、各地で広く使われていることである。また、1999年以降、時系列デ018Civil Engineering Consultant VOL.280 July 2018