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Consultant280

巻頭言Consultants豊かさの形成に寄与する「A N D」一般社団法人建設コンサルタンツ協会福島宏治常任理事九州支部長「黒い白鳥が生息しているなんて」。1967年にオーストラリアでの「黒い白鳥」発見により、それまで全て白いとされていた白鳥の常識が覆りました。確率論や従来からの知識や経験からでは「ありえなくて起こりえない」と思われていたことが急に生じた場合の、社会的影響の甚大さの表現に引用されるBlack Swan Theoryと呼ばれる周知の表現です。特に、予測できない極端な災害や金融危機の発生時に用いられています。しかし、周囲を見渡せば、金融危機に限らずブラック・スワン的災害は、近年頻繁に発生しています。我が国でも、東日本大震災、原発事故、熊本地震等、立て続けにブラック・スワンが飛来しています。これらに、専門家として現場で対峙し、危機を乗り越える支援をすることが、我々建設コンサルタント従事者の社会的役割のひとつです。九州でも、2017年夏の豪雨災害できゅうだい被災したJR久大本線(久留米~大分)が関係者の努力と支援により2018年7月14日に全線復旧の予定です。ようやく、九州の横軸が鉄軌道でも再び繋がります。我々建設コンサルタントは本号特集の「交通手段」についても、その基盤としての道路、橋梁、河川、空港、港湾等の社会資本整備に深く、静かに(広報戦略の自戒を込めて)関与して来ました。その最大の生産要素は、技術者の知恵と「現在と将来の社会の役に立つ仕事」「国土の豊かさの形成の一翼を担う仕事」という使命感・達成感、いわば身体から湧き出る再生可能エネルギーであったでしょう。今我が国は、人口減少、少子高齢化の急進により担い手である技術者の確保が喫緊の課題となって久しく、業界でも就業環境の改善や働き方改革の推進に向けた取り組みを建設コンサルタンツ協会本部先導で強化推進しています。事業をより魅力的に進化させ、入職者を継続的に増加させていくためには、社会資本整備市場の一定規模以上の永続とともに、事業体としての生産性向上において他産業に劣後しないことが必要です。産業間における競争優位性を確保し続けられなければ、自然淘汰の自動ドアが開くことになる可能性があります。現在、産官学で取り組んでいるICT(i-Construction)の推進は、限られた投下資本量、投下労働量の中でも、いかに生産性を向上させられるかという課題としてとらえられています。肝は、全要素生産性(Total Factor Productivity:TFP)を向上させるということです。TFPは技術革新や資源配分の変化のほか、労働者の能力の向上等の労働の質的変化や、最先端の情報通信技術等を含む生産設備投資等が含まれた整理がなされています。交通手段でも面的・線的・拠点間で果たして来た機能に加えて、様々な交通モードやICT技術を組み合わせることで、情報の流れも含めた新たな価値が創造され、交通弱者対策等の社会問題にも対応可能だと考えられています。「and」という選択肢の広がりです。単体のモード開発だけではなく、シェアリング等を受け入れる制度の見直し、利用者意識の変容に対応した広報戦略等において、我々の役割として新しいシナリオ作成への参画という土俵が生まれて来ています。建設コンサルタント業の経営的側面においても、単体のビジネス領域内の技術開発だけではなく、異分野との連携等による事業構造の変革のための新しい時間と知恵の使い方・流し方が社会的要求事項です。足元では、多様な分野の専門的担い手を仲間として迎え入れ、既存分野技術と新連携の継続的深化を図るとともに、対象地域の人々を巻き込んだ事業創造が必要だと考えています。建設コンサルタンツ協会九州支部の一般公募で夢を形にするプロジェクト「夢アイデア事業」は小規模ながらもその一環で、16年目を迎えます。国連統計によれば、日本では100歳以上の人口が100万人を超える日も遠くないようです。100年ライフ時代には、今までのロールモデルは通用しません。人生の後半戦で今までとは違う変身が必要になるように、組織も産業も変身を重ねて行くことになるはずです。経営の現場は、常に択一的選択「or」の連続ですが、今我々が取り組んでいる働き方改革とは、まさに「and」の連関であり、新しいライフサイクルを作り上げることになります。物事を一変させるブラック・スワンは必ず存在します。複雑な問題に耐え、問い続けていく力を持った専門技術者が集まる産業として「国土の豊かさの形成」に、選択肢広く寄与し続けて行きたいと決意しています。