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やすい自動車利用の形態として、カーシェアおよびライドシェアへの注目が、特に自動車関連産業側から高まっている側面がある。これは、時として都市交通の実態や課題とは関係なく、電気自動車普及が目的化した動きと理解できる。都市交通計画の側とは若干相容れない観点である。写真6 GO-J E K(オートバイタクシー予約決済システム)の画面ニーズ側の事情としては、ひとつは移動ニーズへの対応である。従来の交通手段で不便を感じていた、苦痛を強いられていた、あるいは外出を控えざるを得なかった人たちに喜ばれるかたちで普及が進んだ面がある。同時に、政策ニーズへの対応もある。自家用車依存を減らす、都心の地下鉄の混雑を緩和する、駐輪場の混雑を緩和する、タクシー不足を解消する、というような政策ニーズへの対応策として選ばれている面がある。また、世の中の流れとして、シェアリングエコノミーへの関心が高まっていることも追い風にはなっている。さらに、ピークカー議論(文献2)に代表されるように、自家用車保有と利用しか選択肢のない時代の終わりになりつつあるという時代認識もあるといえる。システム実現の背景には、情報通信技術の著しい発展がある。車両管理や顧客管理、精算業務等に、インターネット、そしてスマートフォンが果たしている役割が大きい。我が国のカーシェアリングの場合には、加えて、コインパーキング施設の量的拡大という要素もある。カーシェアおよびライドシェアの場合には、これらに加えて技術普及ニーズというものがある。電気自動車の普及、自動運転車の動向の見極めから、それらが普及し今後の課題先に述べた二種免許などの制度上の課題や、駐車場、駐輪場などの課題は、ひとつひとつはなんとか整理できていくものと思われるが、大きな課題としていくつかを指摘しておく。ひとつが、費用負担を含む都市交通システムとしての位置づけである。都市交通需要は都市活動から派生する需要であり、その需要を管理調整し、対応するときに、その需要のどの部分をシェアリングシステムが担うのか、という設計図が必要になる。新規に導入する場合には、現在のどのような需要を転換させるのか、あるいはどのような需要を引き出すのか、そのとき、既存の交通手段、具体的には、徒歩、個人所有自転車、個人所有自動車、バスなどの公共交通とどういう役割分担をさせるのか、それぞれの運営主体が、あるいは都市交通と直接関係のない主体がどのように費用負担をして、どのようにリスクを背負うのか、全体俯瞰図が必要である。費用については、修理維持費用がそれなりに必要なことを踏まえる必要がある。もうひとつが、都市空間の中での位置づけである。都市の中の道路空間は限られている。曜日によって時間帯によって、あるいはイベントの有無によって変動する交通需要を、この道路空間におさめていかなくてはいけない。貸し借りのステーション、乗降場所、走行空間(特に自転車)をどのように確保するのか、多くのシェアリングシステムは、規模の経済が働くこともあり、どうしてもそれなりの大きさに拡大してしまう。それを受け止める空間を確保できるかどうかである。最後が、未来の技術動向との整合である。超小型のものを含めて電気自動車、そして自動運転車の技術とどのようにつなげていくのか、時間軸上の俯瞰図が必要になってくる。<参考文献>1)高橋洋二他(2016)、各国のシェアバイク事情、自治体国際化フォーラム2016年10月号、pp.2-152)Phil Goodwin(2012)、“Peak Travel, Peak Car, and the Future of Mobility”,OECD International Transport Forum3)中村文彦(2017)、「都市交通のモビリティ・デザイン」、サン・ネット出版Civil Engineering Consultant VOL.280 July 2018029