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ついて静かな変化が起きている。これから見る事例は物流全体から見れば部分的、あるいは例外的な位置づけとも言えるものであるが、それぞれ本質的な点でこれらの性質に関わっており、興味深いものだと思う。宅配便とはここで、事例の前提となる宅配便について少し説明しておきたい。日本では、ヤマト運輸が1976年に始めた「宅急便」が代表で、荷物1個から利用でき、自宅まで荷物を取りに来てくれて、日本全国どこへでも、原則翌日、相手方の家に届けてくれる輸送サービスである。届けてくれるのはもちろんトラックの運転手であるが、ただ車を運転するだけではなく、料金の説明や丁寧な挨拶など、利用者への接客も行う点が当時の運送業では画期的だったようだ。宅配便の輸送システムは、営業所を基点にして近隣地域で荷物の集荷や配送に回る集配車と、営業所間の幹線輸送を行う運行車の2つの組合せでできている。集配車は住宅街の細い道を中心に走るから2t以下のトラックが主流で最近は軽自動車も増えている。一方で、東京から大阪へのような長距離の幹線輸送は、大量の貨物があるし、高速道路のような太い道路を利用できるので、10t車等の大型トラックが使われている。日本に住む人にとっては日本全国どこでも利用できる便利なサービスで、個人の自宅への配送サービスとしてインフラ的な存在になっている。現在はヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の大手3社が中心になってサービスを競い合っている。なお、宅急便の開発ストーリーについては、ヤマト運輸元社長小倉昌男氏の『経営学』(日経BP社)に詳しく書かれている。無人配送の実用実験「ロボネコヤマト」さて、先ほど挙げた前提の1つ目「モノを輸送するための輸送手段には、人が伴う」について、どのようなことが起きているか見てみよう。言うまでもなく宅配便は、配送員がトラックや台車で運んでくる。ところが今、新たな取組みが始まっている。ヤマト運輸とディー・エヌ・エーが未来の自動運転社会を見据えた実用実験として、2017年4月から2018年6月まで神奈川県藤沢市の一部地区で実施した「ロボネコヤマト」プロジェクトである。対象地区に住む住民は、不在で荷物を受け取れなかった時の選択肢として、ヤマト運輸の会員向けアプリを図1 地図上で指定できるロボネコヤマトの受け取り場所通じ、自宅への再配達以外にも、自由に受け取り場所の指定をできる。具体的には、道路安全等の理由により対象外とされる区間を除いてサービス提供可能とされる地図の上で、公道上の詳細な場所を指定できる(図1)。例えば、公園で遊んでいるところへ届けてもらうこともできるのである(写真1)。基本コンセプトとして無人運転が組み込まれ、営業所で荷物を積み込まれたトラックは、無人の自動運転で指定場所に向かう運用が想定されている。実用実験では、現在無人運転が法律で認められていないので有人運転を行っているが、目的地に着くと、受け取り人は自分でトラックのドアを開けて荷物を取り出し、運転手は原則関与しないことになっている。この実験では無人運転による配送に対するニーズがあるかどうかという点も目的の一つとされている。これまでモノは人が運んでくることが当たり前だったが、無人運転が実用化され、それが変わる日も来るかもしれない。Civil Engineering Consultant VOL.280 July 2018031