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特集交通手段?あなたは何で移動する??6次世代の交通手段?魅力的な交通と都市計画?森本章倫MORIMOTO Akinori早稲田大学創造理工学部社会環境工学科/教授日本の交通の未来はどうなるのだろうか。交通手段はどんなものが残っていくのだろうか。どんな交通手段が活躍していくのだろうか。人々が利用したい交通手段とは、求めているものとはどんなものであるのだろうか。次世代の交通手段について考える。交通が都市に及ぼす影響都市計画において交通と土地利用は2つの大きなテーマである。それは、この両者が都市構造を形成するのに重要な役割を担っているからである。都市内の適地で居住や業務、商業などの土地利用がなされ、それを道路や鉄道といった交通インフラが支えている。今から約150年前までの主たる交通は徒歩であった。街の中心から歩いて30分程度の距離内で城下町や宿場町が形成され、過密でコンパクトにまとまった市街地を、歩行を主とした街路網が支えていた。明治期になると鉄道敷設が始まり、多くの地方都市に鉄道駅が建設された。当時の鉄道といえば蒸気機関車であり、煙害などの影響から街の端に作られる場合が多かった。今でも旧市街地と駅が2km程度離れているのはその名残である。その後、鉄道利用者が増えると、鉄道駅が街の玄関口となり、次第に市街地は鉄道駅に引っ張られる形で広がった。戦後の高度経済成長期を経て、モータリゼーションが加速すると道路ネットワークが拡充され、街は次第に自動車依存の低密拡散型へと変化を遂げる。この150年間に都市構造は徒歩の時代の「点」から、鉄道、バスの時代の「線」へ、そして自動車の時代の「面」へと変化を遂げた。要約すると新しい交通機関の出現が街の形を大きく変えてきたといえる。そういった意味で、次世代交通の出現は都市計画からみても大きな転換期となる可能性を秘めている。それでは次の都市の形を変える次世代の交通機関とは何か。ここではその流れを3つに大別して整理する。第一は交通機関が技術革新によって進化していることである。より早く、快適でかつ効率的な乗り物が出現してきた。自動車の次を担う交通としては、電気自動車(EV)や次世代路面電車(LRT)などの環境に優しい交通機関や、ドライバーが不要な自動運転車などが着目されている。あるいはセグウェイなどの1人乗りでコンパクトなパーソナルモビリティ(Personal Mobility)も急速に進化している。第二は交通機関の使い方の進化である。これまでのように個人が車を所有して利用するのではなく、ICT技術を活用した賢い共有「シェア」が始まっている。サイクルシェア、カーシェア、ライドシェアなどシェアリング事業が活性化している。Uberのように個人のドライバーが空いている時間を活用してタクシー業務を行ったり、MaaS(Mobility as a Service)では複数の交通手段をまとめてサービス提供したりするなど、移動サービス自体が大きな変化を遂げようとしている。第三は交通機関の利用目的の多様化である。交通は、本来は目的地にいくまでの手段である。しかし、交通自体が目的となる場合もある。例えば、健康のために散歩する。友人とドライブを楽しむ。あるいは新しい交通機関なので乗ってみたいと思う。これらは交通を目的の一つとして楽しんでいる。総じて、第一と第二の主たる目的は「早くて便利な」交通環境を創出することにあり、第三の主たる目的は「健康で楽しむ」交通環境を再認識することにある。本稿では特に後者の「楽しむ交通」に着目して、次世代交通の可能性とまちづくりについて考えてみたい。034Civil Engineering Consultant VOL.280 July 2018