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りするかたちで普及するものと思われる。次世代交通が対象とする交通需要は、もちろん移動手段なので派生需要への対応であるが、新しいからこそ本源的需要も同時に発生する。この本源的需要の喚起を、まちづくりに活用したい。本来は手段である交通が、目的となって人を呼び込むのである。新しいから乗ってみたい、おもしろそう、カッコいい乗り物といった純粋な動機で、人々を魅了する。新しい交通に合わせて街のイメージも変わるかもしれない。実際に、お洒落なLRTがある街は、街並みも素敵な場所が多い。街中での散策を楽しみ、LRTでの移動も楽しみ、そしてオープンカフェでの食事やお店での買い物を楽しむ。街中での移動、滞在、消費といった行動がどれも本源的な需要となって、まちづくりの相乗効果を生む。トータルデザインされた街中は、これまでお客をとられ続けた郊外の大型商業施設にも決して負けない魅力を創出する。都市間の超高速移動なら、リニア新幹線の出番である。まさに「どこでもドア」のような陸上交通最速の移動が実現すると、派生需要としての時間短縮効果は大きい。残念ながら現在計画中のルートは大半がトンネルなので、景色はあまり楽しめないが、未知の車両への興味は本源的需要も喚起するだろう。一生に一回でも良いから乗ってみたいとの本源的需要があれば、日本人だけで毎年約100万人近い新規需要が生まれることになる。都心と郊外の移動は、専用走行空間をもった次世代交通が活躍する。ここでは派生需要としての交通として、定時性や速達性を有することで、移動時の負の効用を最小化する。都心部は、だれでも簡単に安く、早く行ける場所であってほしい。LRTやBRT(Bus RapidTransit)、あるいは自動運転バスなどの公共交通機関の活躍が期待される。では、郊外駅で降りた後の2次交通はどうであろうか。まずは、健康的に歩いて暮らせる距離内に住宅があることが望ましい。ちょっと離れるなら自転車が最適である。徒歩や自転車は派生需要でもあるが、健康維持の観点では本源的需要でもある。駅まで結構距離があ写真2オープンカフェとLRT(フランス、アンジェ)表1派生的・本源的需要からみた次世代交通の役割交通機関交通施設派生的需要パーソナルモビリティ、自動運転、B R T、L R T(郊外部)、リニア新幹線高速道路、主要幹線道路、バイパス道路本源的需要E Vバス(遊覧)、L R T(都心部)歩行者天国、トランジットモール、生活道路る場合や、歩くのが苦手な高齢者ならば、パーソナルモビリティや自動運転がその移動を支援する。総じて、都市内の派生的需要にはFastなモビリティを、本源的需要にはSlowなモビリティを対応させる。また、各モビリティにあった交通施設を都市内に適切に整備する。表1に次世代交通の役割例を示す。重要なことは都市内の交通施設と、次世代交通を含めた交通機関の双方を上手に組み合わせた交通体系のデザインである。2050年には現在より約2,500万人の人口が減少し、都市自体もそれに合わせて上手に縮退し、持続可能な都市構造へと変化が余儀なくされている。新しい交通は、望ましい未来都市を支えると同時に、その都市構造へと導くための大きな役割を担っている。そのためには、未来を見据えた新しい交通戦略の立案が不可欠である。Civil Engineering Consultant VOL.280 July 2018037