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多種多様な阿蘇の恵みの中でも石橋は特別です。石橋とそこに流れる川の水とのコラボレーションで美しい景観を生み出します。架橋当時、その場所は人々にとって往来の難所でした。阿蘇の大噴火が造ったその難所を、大噴火による火砕流が固まった溶結凝灰岩で人々は克服してみせたのです。日本には世界の活火山の1割弱があると云われています。それらの噴火は人類だけでなくあらゆる生物にとって脅威です。しかし、多くの恵みも与えてくれます。石橋には、ピンチをチャンスに変えてゆく先人たちが教えてくれた人生訓を感じます。写真7 2 0 16年6月の洪水で輪石だけが残った下用来橋(熊本県美里町)困難な維持管理全国の石橋の中には、国指定の重要文化財や自治体指定の石橋も多くあります。指定文化財の石橋に関してはそれなりの管理もされています。しかし、地域にもよりますが、管理の行き届いていない石橋が多いです。熊本県の石橋は、山間部に多いのが一因のようで、明治時代には600基以上あったと云われていますが「いつの間にかなくなった」と高齢の地元住民からよく聞かされます。経済成長に伴う価値観の変化や老朽化による崩落撤去、気象変動による降水量の増加、人工林の大木化による流木被害など原因は様々です。今でも崩落寸前や放置されたままになっている石橋がいくつかあります。修繕、復元、移設するにしても資金や石工の問題などが生じます。日本一の水路橋である通潤橋や太陽の位置によってハートの影が出来る二俣福良渡等は、熊本地震で災害にあいましたが、指定文化財であるため行政からの支援が得られます。しかし、それ以外の被害を受けた石橋の復旧は困難です。行政から見て、地域の文化、土木遺産である石橋への意識の問題かも知れません。課題石橋の維持管理は課題山積です。熊本県においては緑川水系に約140基、菊池川水系にも約100基の石橋写真8標柱の設置作業が現存しています。通潤橋を含め、架橋後200年経った今でも現役で使われている水路橋も多くみられます。そんな中、阿蘇の南側に位置する美里町には36基の石橋があります。多種多様な石橋は「石橋の博物館」と表現しても過言ではありません。昨今、「地域創生」や「地域おこし」と云う言葉をよく耳にします。石橋は地域の文化であり土木遺産です。一部地域ではこれらを地域おこしに活用されていますが、決して万全ではないのが現状です。全国に石橋が分布する中で、多様な観点から「美里の石橋」が地域創生に活用されていない現実に歯がゆささえ感じていました。そのような現実を踏まえ、2015年に「美里町石橋愛好会」を設立しました。36基のうち10基は指定文化財ですが、それらも充分な維持管理がされているとは思えません。藪の中にあったり草木が覆い茂っていたりで、地元の人も気がつかないのもいくつかありました。2016年6月の豪雨では1基が完全流失しました。他にも数基に被害が見られ、自然災害を恐れているのが現状です。2017年度は会員の奉仕活動や行政からの支援等で、標柱の設置や、公共施設での写真コンテストの展示等を行いました。自治体は地域おこしの「目玉」に苦労しています。阿蘇の恵みを受けた地域の遺産を活用できるように、文化活動、教育活動、周知活動を通じて地域創生にお役にたてればと云う想いです。<参考資料>1)霊台橋―最高の美しさに秘められた幕末の黄金比』一村一博2011年熊本日日新聞情報文化センター<図提供>図2出典:小野・渡辺(1983)阿蘇カルデラ月刊地球44, 73-82図3日本の石橋を守る会会長・上塚尚孝Civil Engineering Consultant VOL.281 October 2018023