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普及、農業以外の職につく人の増加などの様々な理由から、無畜農家が入会権を持つケースや、入会権を放棄する人が多くなってきています。それに伴って、多くの人手が必要となる草原の維持管理が困難になってきています。写真2、3阿蘇の草原にはサクラソウ(左)やツクシマツモト(右)など、希少な美しい野の花が咲きます阿蘇草原の多面的価値阿蘇には年間1,600万人(2015年資料)を超える観光客が、広大な草原や牛馬が放牧されたのどかな風景を楽しみに訪れています。多くの人たちに愛される草原の風景は阿蘇の大きな財産といえます。しかし、草原の価値はそれだけではありません。阿蘇の草原は全国の草地構成と比較しても、二次草原といわれるススキ草原とシバ草原の面積割合が圧倒的に高く、この二次草原は、氷河期からの生き残りである大陸系遺存種の生育環境として重要なことも明らかになっており、草原生態系保全上も重要な地域といえます。日本一の規模を誇るサクラソウの群生、阿蘇地域とその周辺にしか生育しないハナシノ図1全国の草原は明治・大正期から1/10以下になったブ、絶滅危惧種であるヒゴタイやツクシマツモトなど、四あるなど、地球温暖化防止にも一役買っていることが明季折々に可憐な草花が咲き誇ります。また、阿蘇は森林らかになっています。と草原の両方の自然環境に恵まれていることから、豊富近年、全国各地で災害が起きていますが、草原は山な種類の植物(1,600種)、鳥類(150種)やチョウ類火事防止や土砂崩壊防止など、災害防止機能もありま(105種)が見られ、日本国内でも絶滅危惧種が集中しす。野焼きを続ける理由の一つに大きな山火事と土石ている生物多様性ホットスポットの一つとなっています。流災害を最小限にとどめることがあげられます。野焼きまた草原は、牛の放牧地として安心・安全な肉用牛をが中止され草原が荒れると「霜崩れ」という土砂流失生産し、日本の農畜産業を支えています。加えて草原は、や崩壊が起こる危険性が高くなるのです。森林に匹敵する優れた水源涵養機能を持っています。このように、多面的な機能を有し、様々な恵みをもた草原に降りそそぐ年間2,500mmを超える多量の雨は、らす阿蘇の草原は「九州の宝」として評価され、草原景広大な大地に滲みこみ、6つの一級河川の水源となり、観を含む阿蘇地域全体が2013年には「世界農業遺約230万人に水を供給する九州の水がめとなっていま産」、2014年には「世界ジオパーク」に認定されています。す。阿蘇各地1,500箇所以上で湧く水は名水として知られています。阿蘇草原の危機さらに、千年に及ぶ人と草原との関わりは、野焼き、長い間、人々は大切な草原を守り利用してきました盆花採り、干し草刈り、草小積みなど独自の文化を生みが、近代化による農業形態や生活様式の変化にともな出し、それらは阿蘇の自然とともに多くの文学作品にもい草刈りや放牧で利用される草原の面積は大きく減少取り上げられています。また最近の調査では、野焼きにしました。また、畜産業の低迷による後継者不足・高齢よって植物体の中の炭素を一部地中に蓄積する効果が化により、野焼き・輪地切りといった草原維持のためのCivil Engineering Consultant VOL.281 October 2018025