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埼玉県北部に位置する行田市は都心から1時間程度の距離で、都内へ通勤する市民も多くいます。かくいう私も高校から都内へ通い、大学卒業後、都内の会社へ就職、結婚後に転居し、最終的に実家を改装し両親との同居がはじまり、その後も都内の設計事務所へ通勤する毎日でした。父の看病の為サラリーマン生活を止め介護に専念し、父が亡くなった後、地元で建築設計事務所を開業しました。そんな経緯の開業なので、特に仕事の当ても無い中で、建築設計者とはどの様な職能を持つのか、市民の皆さんに知って貰い、自らの活躍の場を広げようと、建築士仲間を集め「まちづくり勉強会」を始めました。実は開業した私の事務所は、足袋の製品保管庫「足袋蔵」を改装したものだった為、商工会議所所員に誘われ、旧小川忠次郎商店の活用方法をお手伝いしたのが足袋蔵ネットワークの発端です。その後勉強会の仲間が足袋蔵ネットワークへメンバーとして参加したので、4 6名中8名が一級建築士です。「行田市」と伝えても誰も聞いた事もなく、位置が解らない中「足袋で有名な町ね」と言ってくれた同級生の両親がいました。昭和初期生まれの世代には知られた町だったようです。そんな原体験から、町の文化を誇りに思い、市民のアイデンティティーとして確立し、うち捨てられ忘れ去られようとしている足袋蔵等近代化遺産を活用して見せる事で、立派な町の資産であると理解して貰おうと活動しています。市民には「ありふれた町の風景」が、実は他者(来街者)からすれば文化的価値を背負った建造物になる「蔵めぐりまちあるき」イベントを2 0 0 5年から毎年開催しています。活用事例の点と点を結んで線にして、いずれは景観計画など面として整備されれば良いと考えています。我々の活動は当初から建築物の保存という捉え方は無く、あくまで「活用」が主体でした。建築は利用目的の為に成されたもので、足袋蔵は、元は倉庫でしか無く、実用の為に建てられたものです。昔、足袋は防寒が主体であり、秋口の出荷を目指して製品を保管し、火災による被害を避ける為に取り入れられたものが土蔵造りの倉庫です。活用の為の苦労は、やはりその土蔵造りに起因するも特集土木施設の転用近代化遺産を活用したまちづくり008Civil Engineering Consultant VOL.282 January 2019