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のが多いです。土蔵造りは一般の木造建築より重量があり、不同沈下がおきている例が殆どです。新たに建具等を設ける場合、水平や垂直に取り付けるのでその帳尻を上手くごまかさないといけません。土壁はごくありふれた竹と藁と土で作られていますが、手間と時間が掛かる作業で、現代ではとても高価なものとなってしまいます。資金的には公的な助成金をコンペを経て獲得しています。14年間の活動で得た改修資金は4,600万円程ですが、設計監理がボランティアなので、専門職のいない団体などよりは効率的な活動だと思います。行田市の日本遺産認定は3度目の挑戦にして得た快挙で、「和装文化の足下をささえ続ける足袋蔵のまち行田」と国内唯一の足袋で栄えた町の文化を認めて頂いた結果なので、少なからず我々の活動の成果もあると自負しています。それまでは文化ではなく、斜陽産業的な捉えられ方でした。実用品としての足袋でしたが、最近はファッションとしても受け取られ、産業そのものも変化しています。未だ「産業」と「文化」を混同してイベント主体の展開を唱える人も多いですが、小さな火でもいったん点いてしまえばやがては燃えさかる炎になって行くのだと思います。建築実務者から観る土木構造物の可能性は、経年変化に強く頑強に造られていてメンテナンスの意味からも建築物より優位な一面、活用の方法となると「人」が使う為には法令の整備等が必要と思われます。モニュメント的に「遺構」として一部分が残されても、全体が想像出来ないと、モニュメントとしての感動が薄れてしまいます。余部鉄橋は良い形で残されていると思いますが、後から造られたコンクリート構造物のボリュームが圧倒的で、対比と調和を考慮してもう少し存在感を消せるような構造を採れなかったものかなと感じました。今後の活動としては、あくまでも市民活動なので無理のない範囲で、活動そのものが楽しくありたいと思っています。また、蔵の所有者の意向や都合もあるので「その場に応じて」となるケースが多く、場当たり的な活動になりがちですが、それに対応出来るよう、様々なバックデーターを蓄積して行きたいと思います。旧小川忠次郎商店の店舗及び主屋(写真:朽木宏)朽木宏KUCHIKI HiroshiプロフィールN P O法人ぎょうだ足袋蔵ネットワーク代表理事。クチキ建築設計事務所代表。ものつくり大学客員教授。一級建築士。応急危険度判定士。1957年埼玉県行田市生まれ。日本大学理工学部建築学科卒業後、都内の建築設計事務所勤務を経て行田市に戻り、2002年に足袋蔵を改装してクチキ建築設計事務所を開設。2004年には「NPO法人ぎょうだ足袋蔵ネットワーク」設立に携わり、代表理事に就任。市民自らの手による足袋蔵を活かして暮らしを楽しめるまちづくりを進めている。2006 ? 2007年行田市景観賞審査委員代表代行。2008年から行田市都市計画審議会委員/行田市公益活動促進のための基本方針実施計画策定委員長。Civil Engineering Consultant VOL.282 January 2019009