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短期間で停止した。その後は名古屋市水道局の倉庫として利用されていた。■図書館へと転身長い間、名目上は倉庫ではあるが、廃屋同然であった稲葉地配水塔は1965(昭和40)年7月、中村図書館として利用されることになった。配水塔としての機能を失ってから実に20年以上経ての再生である。当時の名古屋市には鶴舞、栄、熱田、南の4つの図書館があったが、市民からは身近なところに図書館がほしいとの要望が出ていた。そこで当時の市長杉戸清は「1区1図書館」を公約に掲げ再選を果たした。そこで中村区の図書館として稲葉地配水塔が再利用されたのである。なぜ配水塔に目をつけたのかは定かではないが、杉戸市長が元水道局長であったので、廃屋同然の配水塔の有効利用を考えていたのかもしれない。図書館として使用するにあたり、改修工事が行われた。当時、円形の図書館は全国的にも珍しく、改修の参考にするために関西大学の円形図書館(現円神館)の視察も行われた。改修では次の3点に留意したと言われている。1配水塔の外観をできる限りそのまま保つこと、2吹き抜けの部分に書庫を集めること、3地震に耐えうること。1において外観の変更は窓の拡幅工事のみであった。それも3の耐震性を保つために最小限に留めた。2は配水塔の構造は中心から心柱、内壁、外壁からなっており、心柱と内壁の間は吹き抜けであった。この吹き抜けの部分に書庫を設置した。このようにして旧稲葉地配水塔は図書館へと生まれ変わり、市民から親しまれる存在となった。開館当初は珍しさもあり、連日大勢の人が列をなして訪れるなど賑わいを見せたという。1982(昭和57)年には日本建築学会が「建築学的に重要な約2,000棟」の一つとしてとりあげ、1989(平成元)年には名古屋市の都市景観重要建築物にも指定されるなど歴史的・文化的価値も注目されるようになった。しかし、やはり図書館として造られた建物ではないため、様々な問題も顕在化してきた。入り口にスロープを設けてほしいという要望があがったが、構造上スロープの設置は不可能であった。また各階の階段も高齢者にとっては辛い急角度であった。1985(昭和60)年には市図1中村図書館撤去時(上)と演劇練習館(下)の断面図024Civil Engineering Consultant VOL.282 January 2019