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Project 1 briefプロジェクト紹介余部鉄橋「空の駅」展望施設のデザインと設計大波修二OONAMI Syuuji株式会社オリエンタルコンサルタンツ関東支社都市政策・デザイン部次長■はじめに余部鉄橋「空の駅」展望施設は、役割を終えた鋼鉄道橋を展望施設に大規模改修したもので、土木遺産の保存と観光施設化を両立させたプロジェクトである。保存までの経緯と、平成22年度に実施した鉄橋の調査及び補修・補強、展望施設のデザインについて報告する。■余部鉄橋の概要余部鉄橋は、兵庫県美方郡香美町香住区(旧香住町)のJR山陰本あまるべよろい線餘部駅東側(鎧駅側)に位置する鉄道橋で、1909(明治42)年12月に着工し約33万円(現在の約42億円)の建設費、延べ25万人を超える人員を投入し1912(明治45)年1月に竣工した。橋脚はアメリカンブリッジカンパニーで製造、セールフレーザ社(米国)が組立、鋼桁は東京石川島造船所製である。19世紀末から米国で広範に使われていた鋼トレッスル式橋脚を採用し、レール面までの高さ41.45m、11基のトレッスル橋脚、23連の橋桁を有し、建設当時「東洋一」といわれた。冬季は日本海からの厳しい季節風に晒され腐食が進行しやすいことから、鉄道院の工手2名が鉄橋の補修のためにいわゆる橋守として常駐し、建設3年後から腐食を防止するための塗装工事や部材の交換などが行われた。■架け替えと鉄橋の保存化1986(昭和61)年12月28日の突風により余部鉄橋通過中の回送列車が転落し、死傷者12名という大事故が発生した。その後、渡橋時の風速規制強化に伴う列車定時性の低下や安全に対する不安等もあり架け替えの議論が本格化し、2002(平成14)年からの「余部鉄橋定時性確保のための新橋梁検討会」を経て、新橋への架け替えが決定した。架け替え計画が進む中、2006(平成18)年度に学識経験者や地元代表を交えた「余部鉄橋利活用検討会」が立ち上げられ、余部鉄橋の歴史及び観光資源としての価値や利活用を行なう上での構造的要件を明確にすると共に、大きな課題であった鉄橋に対する地元住民の思いを踏まえて合意形成を図り、鉄橋の保存・利活用の基本方針が取りまとめられた。2009(平成21)年に保存利活用に向けた提言『余部鉄橋利活用基本計画』にて、道の駅や公園整備などと共に、余部鉄橋の利活用として「空の駅」として展望施設化する基本方針が決定した。その後、新橋建設にあわせて、保存範囲のシミュレーション等により落下物に対する住宅への危険性の少なさや維持管理のしやすさから、餘部駅側の3脚3スパンを残し撤去された。そして翌年7月16日夜に鉄道橋としての運用を終了した。写真1建設当時の余部鉄橋(写真:土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブス)■腐食・損傷状況調査腐食状況調査は、残された3脚及び鋼桁に対して既存の点検梯子を利用しつつクライミングケーブルを038Civil Engineering Consultant VOL.282 January 2019