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写真2通潤橋こうした漂泊する土木技術者は、定着農業民である常民から、異人視される立場にあった。それを示すのが、河童や鬼などの妖怪にまつわる伝承である。河童の実在河童とは、甲羅があって、頭の皿には渦が巻き、散らし髪で、体は水色か緑色で、胡瓜を好物とする、あの日本の妖怪である。エンコ(淵猿)、ガラッパ、ガタロ(川太郎)、ヒョウスベ(兵主部)、ミズチ(水霊)とも呼ばれる。相撲好きで、馬を水辺の深みに引き込むだけでなく、人を引き込むこともある。従来の民俗学では、妖怪を神霊の零落したものと捉えており、水辺を住処とする河童は水神の零落したものだと理解されてきた。しかし、河童は本当に水神なのであろうか。おりぐちしのぶ折口信夫は『河童の話』として、次のような民話を載せている。「ばんじようとあまんしやぐめが約束した。入り江を横ぎつて、対岸へ橋を架けるのに、若し一番鶏の鳴くまでに出来たら、島人を皆喰うてもよい、と言ふのである。三千体の藁人形を作つて、此に呪法をかけて、人として、工事にかゝつた。鶏も鳴かぬ中に、出来あがりさうになつたのを見たばんじようは、鶏のときをつくる真似を、陰に居てした。あまんしやぐめは、工事を止かいまげめて『掻曲放ちよけ』と叫んだ。其跡が『げいまぎ崎』と言はれてゐる。又三千の人形に、千体は海へ、千体は川へ、千体は山へ行け、と言うて放した。此が皆、があたろになつた。」これは「土木工事で働かされた人形が、工事が終わると放たれて『があたろ』すなわち河童になる」という話である。?曲を放つ(髷を切る)と河童の散らし髪となる。散らしの髪は「童」の形態であり、常民の姿ではない。「土木工事の際に働かされた人形の成れの果てが河童である」という民話は、柳田によっても記録されており、全国各地で採集されている。土木工事を助けた人形、河童とはいったい何のことであろうか。児童文学作家の松谷みよ子は、岸和田市の久米田池で「行基による堤防工事を土人形が手伝った」という伝承を採集し、今なお、土人形の子孫と呼ばれる人々が、堤防近くに住んでいることを発見している。また、産婦人科医でありながら非農業研究にいち早く取り組んだ若尾五雄は、「ミズチが行基のつくった藁人形から発Civil Engineering Consultant VOL.283 April 2019021