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論説・提言第13回このコーナーでは「日本が目指すべき姿と社会のあり方、そこで必要とされるインフラと実現に向けた方策、そしてその際に果たすべき建設コンサルタントの役割とは」をテーマに、各専門分野の視点からの提言を掲載しています。課題山積?だからこそ古市公威先生の教えに学ぶ?課題解決志向の時代私が大学を卒業した1972年にローマクラブから『成長の限界』1)という本が出版された。MIT(マサチューセッツ工科大学)ほかの先生方が当時最先端のシステムダイナミックスという手法を用いて、人口の増加、資源の枯渇などの予測のもとに地球の未来をシミュレートするものであった。数々の悲観的なシナリオが示され、衝撃をもって読んだことを今でも時折、思い出す。警鐘を鳴らすのがこのレポートの目的であり、その回避策や解決法には触れていなかった。21世紀に入り、文明の発展の中で、様々な社会的あるいは技術的課題が明らかになり、解決への期待が寄せられている。『成長の限界』が示した警鐘は間違いではなく、次第と現実味を帯びてきている。半世紀近い時間が経過し、2015年に国連は「Sustainable DevelopmentGoals(持続可能な開発目標)」いわゆるSDGsを提唱し、持続可能性をキーワードに、国際的に共通した解決すべき169の課題を示し、国が、会社などの組織が、さらには個人がその解決に向けてどのような貢献ができるかを問うている。我々に近いところでは、「持続可能でレジリアントな都市」という項目が課題として挙げられている。課題提起ではなく、課題解決策提起の時代にあることを認識する。私の関係する工学系の研究開発の分野では、少し前まではナノ、バイオなどの先端基盤技術志向が圧倒的に主流であった。もちろん、このような先端技術の一定の波及効果はあるものの、なかなか出口が見つからない状況の中で、最近では、まずは課題を設定して、解決のための技術、システム、ルールなどを考えていくバックキャストの方向に変わりつつある。限られた予算のもとでの成果をという点では基盤技術の追求よりは効果が高く、今後、その出口志向はますます強くなると推測する。ただ、どの課題も問題が複雑に絡むことがほとんどであり、その解決は難しく、様々な分野からの英知が欠かせない。1949年、東京都生まれ。横浜国立大学先端科学高等研究院上席特別教授。1972年東京大学を卒業。同大学修士課程を経て1976年ウォータールー大学博士課程修了(Ph.D.)。同大学博士研究員、東京大学地震研究所助手、筑波大学構造工学系助手・講師、東京大学工学部土木工学科助教授を経て1990年から東京大学教授(のちに大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授)。2014年4月から横浜国立大学教授、同年10月から同大学先端科学高等研究院上席特別教授。2013年12月から内閣府総合科学技術・イノベーション会議戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)PD(2019年3月まで)。2007年紫綬褒章、2 0 19年日本学士院賞。古市公威先生の教え語り手藤野陽三(FUJINO Yozo)横浜国立大学先端科学高等研究院上席特別教授東京大学名誉教授一般社団法人建設コンサルタンツ協会理事2014年に土木学会が創立100周年を迎えたとき、皇太子殿下のご臨席のもとでの記念式典など、多くの行事が行われた。その記念事業は2007年秋から準備会としてスタートした。当時の土木学会会長石井弓夫さん(元建設技術研究所社長、元建設コンサルタンツ協会会長)から委員長を依頼され、名誉なことであり、お受けすることにした。準備会の幹事長には、当時30代後半で新進気鋭の東京工業大学教授の藤井聡さん(現京都大学教授)にお願いした。藤井さんの発案で、「土木学会を知ることから」ということで、古市公威初代会長(写真1)の会長就任演説2)を勉強することから始まった。藤井先生の説明がよかったせいもあるが、改めて古市先生の演説を学び、その一言一句に感銘を受けた。演説の中で古市先生は、土木技術者は指揮者を指揮する人、将に将たる人たらねばならぬことを力強く述べ、最後のところで土木学会会員に「研究の範囲を縦横に拡張せられん写真1古市公威002Civil Engineering Consultant VOL.283 April 2019