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高い作業であったが、この時の経験が隅田川の永代橋の工事に生かされたと聞いた時には、依頼した甲斐があったと感じた。■製作製作工場に運び込んだ部材は、まずブラストによる鋼材表面の清浄を実施した。形鋼の陰になる部分やリベットの裏側にショットが届きにくく、通常の3~4倍の作業時間と手間を要した。ブラストの結果、鋼材表面に「DALZELL(王冠マーク)STEEL」の刻印が記されているのが発見された。これより、スコットランドのグラスゴウにある「DalzellSteel and Iron Works」社製の鋼材であることが特定された。フォース鉄道橋やタイタニック号の鋼板も供給している製鉄会社である。また、製作に合わせて4箇所のコッターピンのうち1箇所を解体した。コッターピンは堅く打ち込まれており500tプレス機で力をかけてやっと抜くことができた。解体した結果、コッターピンの構造が判明し、架設時の斜材への引張力の導入に利用されたと推測された。後日、1箇所のコッターピンと地覆が干渉することが判明したが、古い構造を残すためにコッターピンの切断等は行わず、干渉する部分の地覆を切り欠くことで対応した。■架設間詰め材を挟んだ構造を確実に架設するため、橋梁横の仮設構台上で地組みして、一括横取り架設を行った。地組みは構台上に設置した50t吊ラフタークレーンにより順次行った。横取りは、構台上および橋台前面に設けたブラケット上にレールを敷設して、電動チルホール2台により引き出した。約13.3mを約2時写真4写真5横取り架設開通式間半(10cm/min)かけて横取りし、その後、縦取りにより橋台方向に押し込み、最後に約1.5mジャッキダウンを行って所定位置にすえつけた。なお、旧隅田川橋梁が撤去された際にも横取り工法が採用されていたことが、本業務で行った調査で図らずも判明した。86年のときを経て、同じ方法で架設されたことに、感慨を深くした。■開通2013(平成25)年3月21日に近隣住民、横浜市役所担当課、アドバイスをいただいた学識経験者、工事関係者が集まり開通式が行われた。当日は晴天に恵まれ、近所の保育園や小学校の子供達も大勢参加した。1896(明治29)年にはるばる海を越えイギリスからやってきたトラス橋は、当時のわが国の外国への窓写真6霞橋口であった横浜に陸揚げされたものと考えられるが、117年後に再び横浜に戻ってきた。そして、一度は解体されかけたところを再生され、第3の人生を授かった。また、架け替え先の霞橋の幅員に一致し橋長もトラスの5格間に丁度合致した。これらのことから本当に運の良い橋だと思う。しかし、何よりも復活させることができたのは、この橋を愛してやまない、多くの人の力があったからであろう。この小さなトラス橋が、これからも末永く人々に愛されその人生を全うすることを願ってやまない。本プロジェクトが、同様の歴史的橋梁再生の参考になれば望外の喜びです。<参考文献>1)『117年前に造られたプラットトラスの再生』橋梁と基礎2013年6月建設図書2)『錬鉄・鋼移行期における橋梁材料に関する考察』土木学会論文集Vol.68 2012年Civil Engineering Consultant VOL.283 April 2019041