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写真4御殿(ウドゥン)あいかた方をしている「相方積み」(一般的には亀甲積み)である。石積み特有の重厚感がありながらも、美しい曲線が見られ、柔らかな姿の育徳泉を見ることができる。育徳泉から御殿に向かうと擁壁が現れる。整然とした相方積みから自然石をそのまま積み上げた野面積みへと変化する石積み技術の変遷が見られる。一見、部分的に修復したのかと思えるが、玄関から少しずつ変化させている景色のことを考えると、この擁壁も識名園を訪れた人々が御殿に向かうまでの道中に琉球の自然風景や素材、技法を楽しむ仕掛けであり、人々の高揚感や期待感をくすぐるように設計されている。さな築山を配置し、うっそうとした樹木に囲まれた中に位置している。東西約30m、525m 2程度の木造平屋つくりであり、往時の上流階級のみに許された建築様式である。屋根には白漆喰をほどこした赤瓦で、周囲の濃い緑に美しく調和している。冊封使を迎えた一番座、それに連なる二番座、三番座、台所、茶室、前の一番座など、15もの部屋が存在している。一見、1つの建物から構成されているようであるが、主屋、前の座がある建屋、台所部の3つから成る分棟式の建物となっている。これらに渡り廊下や中庭などを巧妙に配置し、一体的な建物として認識できるように工夫されている。あまはじまた主屋と前の座の周辺には雨端を巡らせ軒高を揃えているが、部屋の配置や広狭から生じた棟高の変化は、外から望んだ際の建物や屋根の美しさとなっている。雨端の柱は自然木の形状を活かし、礎石の上に置く沖縄の民家の趣を取り入れている。雨端とは沖縄の民家に見られる軒に差し出した庇のことである。外と内を繋げる空間として位置づけられ、玄関を持たない沖縄特有の民家では、人々との交流の場ともなっている。御殿に使用されている木材は、創建時と同種同形を踏襲し、主にチャーギと呼ばれるイヌマキを用いている。当時チャーギは禁制材であったが、琉球王国の別邸であったため主要建築材料として使用することができた。■琉球らしさが溢れる御殿ウドゥンと呼ばれる御殿は南側の前面に池を、東側に小■御殿から望む風景御殿から初めに目に入るのは横長に広がる「心字池」で図2御殿の平面配置図写真5外と内の中間空間の雨端044Civil Engineering Consultant VOL.283 April 2019