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Civil Engineering Consultant VOL.286 January 2020 023摩川に放流され、東京都青梅市の小作取水堰および東京都羽は 村むら市の羽村取水堰で水道用原水として取水されている。原水は、自然流下により村山・山口貯水池や玉川上水を経て東村山浄水場および東京都武蔵野市の境浄水場へ、また導水ポンプにより東京都羽村市の小作浄水場へ送られ、さらに原水連絡管により埼玉県朝霞市の朝霞浄水場や、東京都板橋区の三園浄水場へ送られる仕組となっている。通常、東京都の水源の約2割が多摩川水系だが、利根川水系の渇水時や水質事故時には、これらの取水・導水施設や原水連絡管などを利用することで、放流量を増やして不足する原水を補うなど、安定給水を図るうえで小河内貯水池は重要な役割を担っている。近年では2011(平成23)年の東日本大震災の際に、金町浄水場の上水から放射性ヨウ素が測定されたため、小河内貯水池からの放流量を増加させている。■ 現在の貯水池の運用について小河内貯水池の流入量や放流量、貯水量などの各種データは、東京都文京区の水運用センターで常時把握・監視されている。また、流入河川やダム上流域などに設置された水位観測機器・気象観測機器により計測されたデータは、無線や電話回線を通してリアルタイムで小河内貯水池管理事務所に送られている。そして、雨量等の気象情報の把握やダムの流入量予測などが行われている。通常は利根川水系の渇水時等に備え、できるだけ小河内貯水池の貯水量を確保することを原則に、各浄水場が必要な原水量を放流している。しかし、台風や集中豪雨等により大量の水が貯水池に流入する時には、ダムの安全を確保するため、通常の放流に加えて余水吐からの放流も行う。その際には、小河内ダムから36km下流の羽村取水堰までの間において、河川パトロールによる警戒や約20基ある放流警報装置による警告を行っている。また、大規模な渇水が発生した時の対応として、人工降雨設備が設置されており、1965 年から利用されている。この人工降雨では、氷の結晶の核となるヨウ化銀をアセトンに溶かし、燃焼機で燃やして上昇気流により雲中に運び、雨の素となる氷の粒をつくる「シーディング(種まき)法」を採用している。貯水池の水質管理は、水質観測船「みやま丸」が調査を行っている。さらに、アオコ対策施設の設置やダム上流域の下水道整備、水道水源林の保全など、貯水池の水質保全も行われている。小河内貯水池の周辺には四季折々の花が咲いており、自然散策路として「いこいの路」が整備されている。2005(平成17)年にはダム湖百選に認定され、憩いの場として多くの方に親しまれている。ぜひ一度足を運んでみてほしい。蛇口をひねれば水が出てくるこの世の中、水が出ることを当たり前に感じてしまっている。多くの方がかかわり、努力の結果こうしておいしい水が飲めることを知った今、われわれの暮らしを支えている水道施設に改めて感謝したい。<参考資料>1)「東京の水道の歴史」東京都水道局(http://www.suidorekishi.jp/images/about/s_history/s_history.pdf)2)『小河内貯水池の概要』東京都水道局 2016年度3)『小河内ダムパンフレット』小河内貯水池管理事務所 2007年4)『東京の水道』東京都水道局 2018年9月<取材協力・資料提供>1) 東京都水道局浄水課2) 小河内貯水池管理事務所<図・写真提供>図1 参考資料3)  図2 参考資料2)  図3 東京都水道局P20上 髙橋真弓  写真1 東京都水道局  写真2、3 塚本敏行  写真4、5 高見元久写真4 第一号取水施設と多摩川第一発電所写真5 水質観測船「みやま丸」