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002 Civil Engineering Consultant VOL.286 January 2020インフラという言葉からは一般的には都市空間、建築物といったいわゆるハード面を想像することが多いですが、これからの超高齢社会には高齢者が安心して暮らすための情報技術・支援などのソフトインフラも重要になってきます。高齢化で認知症が増える社会日本の平均寿命は男性81.25歳、女性87.32歳と過去最高を更新し、いまや女性は世界第2位、男性は第3位です(厚生労働省2018 年)。今後の高齢社会の特徴として認知症高齢者の増加があげられます。厚生労働省によれば認知症高齢者の数は2012年時点で全国に約462万人と推計され、2025年には認知症を患う人の数が700万人となり、これは65歳以上の高齢者の5人に1人に相当します。また、自立して生活できる年齢を指す「健康寿命」は2016 年時点で女性は74.79 歳、男性は72.14歳で、平均寿命とは大きな開きがあります。要介護になってもほとんどの高齢者が在宅で生活をし、認知症の高齢者も半数が自宅であることから、高齢になっても住み慣れた場所で暮らし続けられる住宅や交通インフラなど、地域社会の安全性が重要になってきます。認知症をめぐる事故など昨今、高速道路での逆走など高齢者の自動車事故が増えています。2016 年の逆走249 件の約7割が65歳以上の運転者で、そのうち認知症が疑われる人は4割とされています。また内閣府の調査でも80歳以上の26%が運転をしており、公共交通機関のない地方では車は重要な外出手段で、運転をやめることは困難です。高齢者の安全運転には道路構造や視認性の高い照明、政府も後押しする安全運転サポート車の普及、2009 年から導入されている免許更新時の「認知機能検査」など、ハード・ソフトを合わせた一層の対策が望まれています。また、2007年12月愛知県大おお府ぶ市しで、徘徊症状がある認知症の夫(当時91歳)が、妻(当時85歳)のうたた寝中に家を出て、列車にはねられ死亡するという事故がおき、鉄道会社が家族に約720万円の遅延損害の賠償を求めた裁判がありました。最高裁は介護する家族には賠償責任はないと結論づけ、鉄道会社が敗訴しましたが、認知症の人を抱える家族にとっては他人事ではありません。2004 年からの8年間で認知症または疑いのある人の鉄道事故は少なくとも149 件あり、115人が亡くなっています(2014 年1月12日付の毎日新聞特別調査班の記事)。事故の多くは認知症による徘徊や線路からの転落、危険を察知できないため間違って線路内への立ち入りをしたことによって起こっています。転落防止のホームドアや踏切の監視カメラなどが全国すべての箇所にあるわけではありません。若年性認知症の人や1958 年、大阪府出身。1987年、関西大学大学院修士課程工学研究科建築計画学専攻修了。(株)西武百貨店、(株)ニッセイ基礎研究所主任研究員を経て、2002年東洋大学経済学部社会経済システム学科教授。現在、関西大学政策創造学部教授。専門テーマは「バリアフリー」「少子・高齢化と地域システム」。国や地方自治体の教育、少子化、福祉に関する各機関で委員としての活動経験のほか、女性、母親としての視点も活かして「千葉女性市民の会事務局長」としても活動中。認知症高齢者を地域で支える安心のまちづくり論・説提言このコーナーでは「日本が目指すべき姿と社会のあり方、そこで必要とされるインフラと実現に向けた方策、そして第15回その際に果たすべき建設コンサルタントの役割とは」をテーマに、各専門分野の視点からの提言を掲載しています。語り手白石 真澄(SHIRAISHI Masumi)関西大学政策創造学部教授0%65-69男性70-74 75-79 80-84 85-89 90-94 95+10%20%30%40%50%60%70%80%90%女性全体高齢になるほど認知症の割合が高くなる傾向図1  認知症の有病率