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つ、開発資金ギャップにも対応するために、官民連携を一層推進しています。このため、民間だけでは推進が困難な案件についてJICAが出資・融資をすることが可能となる海外投融資を展開しています。JICA事業とコンサルタントの役割国際協力機構調達部の前川憲治次長から、具体的にJICAにおけるコンサルタント契約等について解説いただきました(以下、講演内容)。JICA事業の契約額の総額は年間1,240 億円程度です。このうちコンサルタント契約は800 億円程度と7 割弱を占めます。契約相手先の選定にはいくつかの方法がありますが、現状では企画競争、すなわちプロポーザル方式がメインです。技術とコストを一定の比率で合わせて評価するQCBS方式( 質と価格による選定:Quality- and Cost-based Selection)については、2019年4月から一部導入され、年度内にはプロポーザル方式から概ね移行する見込みです。現状のプロポーザル方式による配点では、案件によって若干の変動があるものの、「業務従事者の経験・能力」に50%程度、「業務の実施方針」に40%程度、「法人の経験・能力」に10%程度といったケースが多いです。JICAでは選定における透明性確保のため、コンサルタント選定委員会への諮問、評価基準の公開、希望があればプロポーザル評価内容についての面談による説明を実施しています。JICAでは、状況に応じて柔軟な契約変更を前提とした契約を基本としています。また契約の前提となる月額報酬単価については国土交通省単価に準拠して設定しています。質疑応答Q : JICAプロポーザル評価において、JV構成員はどのように評価されますか?A: 「 評価対象従事者」としてノミネートされていれば、配点の大きい「業務従事予定者の経験・能力」の項目が評価されます。また、そうでない場合でも、点数配分は少ないですが「法人としての経験・能力」の項目は評価されることになります。ただし、この場合はJV全社として評価するので、仮にJV構成員は海外経験が少なくても、JV幹事会社に実績があれば大きなマイナスにはならないということもあります。また、バックアップ体制として海外事務所等が無い場合でも、最低限、海外保険加入やコンプライアンス体制の確保策等があれば大きな減点にはならないと思われます。Q : JICAプロポーザルの業務主任者評価において業務主任者の経験が重視されるとあるため業務主任経験者ばかりが起用されることになりませんか?A : 副業務主任者と業務主任者の組み合わせ提案の場合、どちらかに若手を起用した場合に加点する仕組みを構築しているため、中堅技術者が副業務主任経験をつけやすいようにしています。Q : QCBSだと他国のコンサルタントとの競争は激化しませんか?A : ASEAN等のコンサルタントとの勝負であれば日系コンサルタントとの価格差はかなりあり、価格競争は厳しくなります。ただし、技術とコストの評価比率が9:1であれば技術評価にかなりウェイトが置かれことになります。国際的な流れとしては8:2より9:1が多く採用されつつあります。ただし、その場合でもやはりオール日本人では価格競争力に劣るため、現地企業とのJVや外国籍人材を活用する必要はあると思われます。おわりにお二人の講師からは、日本のコンサルタントの一層の活躍を期待する旨の発言が聞かれました。今後、日本の技術や経験を活かした質の高いインフラへの支援を強化していくなかで、これまで海外経験のない国内のコンサルタントを含め、より積極的な海外展開を進めていく必要があると感じました。写真1 セミナーにおける質疑応答の様子(出典:国際委員会)Civil Engineering Consultant VOL.286 January 2020 053