一般社団法人 建設コンサルタンツ協会 九州支部

コラム

ありがとう。たくさんの夢アイデア。正夢になりますように

平成29年2月

夢アイデア交流会2016(建設コンサルタント協会九州支部主催、12月10日)のまちづくりに関する提案の審査に参加した。57件の提案のうち優秀作品9件のプレゼンテーションも聴かせてもらった。審査会、交流会、懇親会―厳冬の中に訪れる小春日和のように、心温かな1日であった。

提案の1篇1篇を読みながら、その「心温かさ」は、どの夢アイデアにも、提案者の発想の源に「優しさ」が共通に、込められていることに気が付いた。その優しさは、人に対してであり、街、そして自然へのものだった。

夢を語る、と言う場合、ある人は自分のビジネスの成功であり、家族の幸せであり、あるいは立身出世、健康長寿であるかも知れない。しかし、57件の提案は全て「他者」への思いやりが夢の始まりであり、立案から提案、中にはそのための実践に踏み出している報告もあった。

人への思いやりは、なおその惨禍がなまなましい熊本地震の体験の基づくもので「IC技術を用いたきめ細やかな物資支援」(優秀賞)や「学生を主体とした自主防災組織・護兵団の結成」あるいは「防災城の築城」「被災した家屋をうまく再建できないものだろうか」など、実際にボランティア活動などの体験を通じて、こうすればもっと被災者を救援できるのではないか、といずれも説得力のある提案であった。夢が、現実に生かされることを祈りたい。

また、現在ただいまの母親たちの悩みである「子育て」についての提案と実践が報告された。「夢の子育て・子育てに不安を持つ母親と子供の大学」(優秀賞)ほか、「地域で子供を育てる体制づくりを」など行政への対策注文だけでなく、地域や教育ボランティアの力で悩める母親たちに手を差し伸べる具体的提案であった。

「街」への提案は、語られることが比較的少ない、都市内の「衰退と崩壊」に対する若者たちの再起への夢・アイデアだった。その代表格が最優秀賞に選ばれた北九州市・若松での「学生村の構築・若松の創生~さまざまな分野の学生が暮らすシエアハウス群」の試みで、廃屋と化した家屋をリフォーム、あるいは新築して学生村をつくり、再起の起爆とする提案だった。北九州市は政令都市の中で人口減と高齢化に直面しているが、近い将来、どの都市も同じ悩みに直面するだろう。そういう問題意識を持った若い世代、同市で学ぶ学生たちの鋭い感性がうれしかった。

同じように「足跡残して愛着のあるまちをつくろう」や「まちなか農園カフェ」「商店街に住みませんか」「子供たちの歌声が流れる商店街、役所、地域センター」などがあった。きっと、心温かい街づくりにつながるだろう。

身近な自然に関しては「隧道を抜けて、宝探しにおいでよ。水源の里・曲淵、野河内」(優秀賞)の荒れた里山の再生への実践活動とそれへの参加を市民に呼びかける提案。昭和53年、福岡都市圏を襲った大渇水の記憶は、はるかに遠く、忘れてしまった市民が多いが、ダム周辺の水源涵養の自然をいつくしむ心を呼び起こさせた提案だった。そうした都市内、身近な自然を大切に思う提案が多く、「百笑園―私が育てた農園がみんなの笑顔を育む」などユーモアあるネーミングとメッセージに微笑んだ人も多かったろう。

夢は夢に終わることが多い。今回で14回を重ねた夢アイデア「まちづくりに関する提案」は累計700件にもなった。夢を実現させるための道を歩み始めたり、実現のための道を考えたり、それを提案する人も多い。奇想天外の夢は楽しく、遠く大空に描かれた虹のような夢も美しい。しかし、今回のように、身近な人へ、街へ、自然への思いやりからくる夢アイデアが正夢になってくれれば、本当にうれしい。

文:玉川 孝道 (西日本新聞社 元副社長)
夢アイデア審査委員会委員長(平成22年~)
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