日本の土木遺産

兼六園
徽軫(ことじ)灯籠と虹橋側から見た霞ケ池の風景
■ 徽軫(ことじ)灯籠と虹橋側から見た霞ケ池の風景

水のない台地に造られた曲水庭園 美に隠された先端技術「兼六園」

今も庭園へ水を送り続ける辰巳用水
■ 今も庭園へ水を送り続ける辰巳用水

兼六園は賀百万石の城下町“金沢”の中心に位置する加賀藩主前田家の廻遊式庭園である。平安時代後期(1100年頃)に書かれた最古の造園書『作庭記』に習って造られ、水戸の偕楽園、岡山の後楽園と並ぶ日本三名園の一つに数えられる。四季折々の美しさを楽しめる庭園は、国内はもとより世界各国からの観光客に親しまれ、北陸観光の中心的な役割を担っている。
庭園は小立野(こだつの)台地と呼ばれるテラス状の地形「河岸段丘」の先端部に造られている。庭園北側の崖先には卯辰山(うだつやま)の眺望や西側の「お堀通り」の先に白く聳える石川門が景観に壮大さを添える。池を掘り築山を盛り立てた面積114,000m2の園内には曲がりくねった庭園の水路“曲水”が配され、わずかに起伏のある平坦地を縫って庭園中央の大きな霞ヶ池へと注いでいる。「お堀通り」の下には逆サイホンの原理を用いて埋設管で金沢城内に用水が引かれていた。そして庭園を巡るすべての水を賄っているのが動力ポンプのない江戸時代から今も兼六園に注ぐ用水路であり、往時はその全貌を秘とされた金沢のもうひとつの土木遺産「辰巳用水」である。古文書には、外郭として兼六園を築いたとの記録も残されている。
兼六園は、美しい庭園に隠された軍事施設であったかも知れない。

【アクセス】
北陸自動車道「金沢西IC」より香林坊方面へ(20分)、または金沢駅よりバスで15分「兼六園下」下車。

【地図】
googleマップで兼六園の位置を確認する

「Consultant」234号

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「土木遺産 日本編」 <<コチラにも掲載されています。
「土木遺産 日本編」
ダイヤモンド社刊

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