日本の土木遺産

荒玉水道と給水塔
街の顔として親しまれている野方給水塔
■ 街の顔として親しまれている野方給水塔

「荒玉水道と給水塔」

生活道路となっている荒玉水道道路
■ 生活道路となっている荒玉水道道路

くねくねと折れ曲がった道路の多い東京の中で、ひときわ目立つまっすぐな道がある。世田谷区喜多見から杉並区高円寺付近までの住宅密集地を貫く約9kmの直線道路。「荒玉水道道路」と呼ばれ“道路”ではあるのだが、この道は車のために作られたものではない。この道は上水の送水管布設のために作られたスペースであり、車両の通行ができるようになったのは1962年からとのことだ。
荒玉水道の「荒」は荒川を、「玉」は多摩川(玉川)を示す言葉である。1923年の関東大震災後、東京市に隣接した町村の急速な都市化による水の需要に応えるために、奥多摩・北豊島両郡にある13の町村が組合を作り、多摩川(玉川)と荒川を結ぶ上水道を建設することになった。しかし実際には2つの川は結ばれておらず、多摩川を水源とする世田谷区の砧(きぬた)浄水所から中野区の野方(のがた)給水所をへて、板橋区の大谷口(おおやぐち)給水所までを管径1.1mの鉄管で結び、総延長約17km の1期工事で終わっている。
1931年9月に竣工した荒玉水道には、野方給水塔と大谷口給水塔がある。しかし、いずれも現在は給水塔として使用されておらず、野方給水塔は防火用水として、また大谷口給水塔は取り壊しが決まっている。2つの給水塔は本来の役目を終えているが「水道タンク」「みずの塔」などと親しみを込めて呼ばれ、街の顔として愛されている。

【アクセス】
JR新宿駅より京王線「桜上水駅」で下車。

【地図】
googleマップで荒玉水道の位置を確認する

「Consultant」238号

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建設コンサルタンツ協会