日本の土木遺産

柳川
人力施工の切通し
■ 柳川の掘割をゆったりと遊覧するドンコ舟

水に浮かぶ町「柳川」

ヤクシカの親子と安房森林軌道
■ 建物の裏側が堀割に面した柳川の家屋

福岡県柳川市は、筑紫次郎とも呼ばれる九州最大の河川“筑後川”とその南にある“矢部川”の最下流に位置する人口約7万5千人の小都市である。市の南部は日本一の干満差のある有明海の湾奥部に面し、大潮時には干満差が6〜7mにも達する。市の大部分は、古くから開拓・干拓された大小規模の干拓地が魚鱗状に広がる海面干拓地帯である。標高は0〜3.5mと低く、平坦で0〜3°の緩やかな傾斜で有明海と接する。
有明海では流入する河川が運ぶ土砂はもとより、潮汐(ちょうせき)作用で運ばれる膨大な泥土が堆積することで、永い年月に亘って広大な干潟が形成されてきた。弥生時代にはこの陸化した干潟に人が住みつき始めた。先人たちは干潟を掘り割り、その泥土を盛り上げて住居を高潮等から守った。そして、掘り割った環濠に雨水真水を溜め、生活の基盤を築いていった。やがて掘割は稲作を中心とする集落の発展とともに、互いにつながって大規模化して水路に形を変えていった。その延長は470kmにも達する。まさにこの「堀割」は、生活を守る土木施設であり知恵の結晶であった。
いま柳川は、縦横に張り巡らされた水路の町「水郷柳川」として親しまれている。「ドンコ舟」と呼ばれる遊覧小舟による川下りは有名である。ゆったりと進む舟の上から見えるのは、自然と水と人の生活が調和した、美しくどこか懐かしい「里堀」の風景である。

【アクセス】
西鉄福岡駅より特急で45分。西鉄柳川駅下車。

【地図】
googleマップで柳川の位置を確認する

「Consultant」234号

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「土木遺産 日本編」 <<コチラにも掲載されています。
「土木遺産 日本編」
ダイヤモンド社刊

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