日本の土木遺産

豊念池ダム
悠然たる面持ちのマルティプルアーチダム正面
■ 悠然たる面持ちのマルティプルアーチダム正面

ヨーロッパの古城を想わせる石積みダム「豊稔池」

山あいに蒼い水を湛える豊稔池ダム
■ 山あいに蒼い水を湛える豊稔池ダム

豊稔池は四国・香川県の西端、愛媛県境に近い三豊郡大野原町の山間に、農地530ha を灌漑する農業用ため池としてひっそりと佇む。豊稔池が全国的にその名を知られているのは、1926年という日本におけるコンクリート築造技術がまだ日浅い時期であるにも関わらず、極めて珍しいマルティプルアーチダムという画期的な型式で建設されたことに由来する。土木工学的には「多拱扶壁(たきょうふへき)式粗石モルタル積石堰堤」と呼ばれる。
その威容からしばしば、ヨーロッパの古城にたとえられる。国内には他に、2連の大倉ダム(宮城県)があるが、石積みでこの様式をしたものはここにしかない。
豊稔池ダムは、中央に5連の扶壁を持つことによって堰堤中央部の水圧を受ける堤体を支える形式となっている。扶壁には、豪雨時に洪水を安全に堰堤から排除するためにサイフォン式の洪水吐が設置されており、満水に近づくと自動的に放水する仕組みとなっている。
老朽化の進んだ豊稔池は、1989年10月に改修工事に着手し、堰堤築造当時の外観を損なうことのないような配慮がなされ、1994年3月に竣工している。毎年7月になると行われる洪水吐(こうずいばき)から大量の水を抜く「ゆるぬき」は、この地に夏の訪れを告げる。

【アクセス】
JR観音寺駅より県道8、9号線で約11km。車で約20分。

【地図】
googleマップで豊念池ダムの位置を確認する

「Consultant」222号

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「土木遺産 日本編」 <<コチラにも掲載されています。
「土木遺産 日本編」
ダイヤモンド社刊

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