日本の土木遺産

奥内の石垣棚田
奥内の棚田の石垣と復元された水車小屋
■ 奥内の棚田の石垣と復元された水車小屋

Only Oneのふるさと「奥内の石垣棚田」

古い石垣に早苗が映える
■ 古い石垣に早苗が映える

愛媛県北宇和郡松野町。奥内遊鶴羽(ゆづりは)地区の樹齢千年を超えるという大銀杏の近くに、待望の水車小屋が復元された。この地区の棚田中腹には平家の流れを汲むという10戸の集落が現存し、これまで耕作を放棄することもなく石垣の棚田で米をつくりつづけてきた。
聞くところによれば少なくとも500 年以上も昔、この地の先祖は田を増やそうと山の斜面を削り、掘り出した大石の上で薪を焚いて石を焼き、沢水をかけて石を割り、その石を組み上げて石垣を造った。水平に造った平場に石を敷き小石を詰めて粘土を被せる。ひび割れるほど干し固めてから、厚く周囲の山の土を入れて、一段一段造ったのだという。平場の面積を少しでも広く取るために石垣は垂直どころか反り返っている。数世紀もの年月に苔や草に染まりながらも野面積(のづらづみ)の石垣は堅固で、断面の鋭さは切り割った時のままである。仰ぎ見れば集落の上になお、棚田の石垣の法面がそそり立つ。渓流を引き入れて急斜地に造った山間型棚田である。
復活したばかりの水車がはにかむようにゆるく回っている。幾代もの先祖の慈が宿るかのように。そして奥内の自然と人を見守る2 本の大銀杏。孫の代になってなお実る樹だから、公孫樹(いちょう)とも書くと初めて知った。

【アクセス】
JR予土線「松丸駅」下車。車で約15分。

【地図】
googleマップで奥内の石垣棚田の位置を確認する

「Consultant」218号

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