ロンドンの中心地から北へ約35マイル(約56km)に位置するレッチワース。ロンドンの劣悪な環境に置かれた労働者階級へのアメニティ豊かな住宅環境の提供を目指し、E・ハワードが『明日の田園都市』を提唱(1889年)してから10余年、1903年にパーカーとアンウィンという二人の建築家が「田園都市」の理想を現実のものにした。彼らは中世のイギリスの田園集落の持つコミュニティ、絵画性を育む集落のデザインに思いを馳せ、E・ハワードの田園都市の理想であった田園と都市の結婚の意訳に見事成功した。
レッチワースには、建設当時の建物から建設されたばかりのタウンセンターまで、途切れることのない100年の時の流れが刻む歴史と、懐かしさを醸しだす絵画的な街並みがある。アンウィンとパーカーが描いたレッチワースの街並みづくりの思いは、100年もの間、人々の営みの中で綿々と引き継がれてきた。そこには、イギリスの中世田園集落から持ち込まれたデザイン技法、計算された『仕掛け』があった。
昨今、住宅地開発やあるいは首都機能移転の検討などにおいて、地形に配慮したクラスター型開発が志向されているが、その設計思想をふんだんに盛り込んだレッチワースには学ぶべきものが多い。
【アクセス】
ケンブリッジ、ピーターバラ、キングス・リンをつなぐ鉄道キングスクロス線でレッチワースガーデンシティ駅下車。
【地図】
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