オーストリアの首都であり長い歴史を誇る古都ウィーンの地下には、幅15m、高さ8 m にも及ぶ大きな下水渠が通っている。ウィーンの下水道はローマ時代から存在したという記録もあるが、本格的な下水道網の整備が始まったのは19世紀初頭からである。コレラの大流行を契機に、不衛生な状態にあった街を蘇らすため、下水道の必要性を痛感した市当局によって1830〜1835年にウィーン川の両脇に幅1.5m、高さ2.0mの下水管が整備された。地元の人々はこれをコレラカナルと呼んでいる。その後も続けられた市全域での下水道整備の結果、コレラの流行は1873年を最後に終息した。さらに1890〜1910年にかけて、ウィーン川の川底を6m
浚渫し、川の一部を暗渠化して地上部を公園や道路とする工事が行われた。これが、いま目にするウィーンの大下水渠の一部である。
コレラカナルと大下水渠はところどころで放水路トンネルにより結ばれており、大雨等でコレラカナルが増水した場合には越流した下水が大下水渠に流れ込むように造られている。
現在のウィーンの下水道の総延長は約7,000km、そのうちメイン管は2,000km に達し、街の地下には大下水道網が張り巡らされている。大下水渠が舞台となった映画「第三の男」に因んだ施設を巡るツアーが観光客に人気である。
【アクセス】
市立公園地下鉄シュタットパーク(市立公園)駅のヨハネスガッセ方面出口すぐ前。
【地図】
googleマップで大下水渠の位置を確認する
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