建設コンサルタント技術者の倫理-信頼される自立・自律した技術者を期して-

建設コンサルタント技術者の倫理

建設コンサルタント技術者の倫理

平成12年10月
(社)建設コンサルタンツ協会

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I.宣言

II.倫理遵守の基本原則

III.行動規範

I.宣言

 我々建設コンサルタント技術者は、わが国及び海外の社会の健全な発展の一翼を担うものとして、また、依頼者の目的を最も合理的に実現する立場にある者として、技術者の誇りと良心に照らして何が正しいかを常に問いかけ、公益を損なうことのないよう誠実に対応することを宣言する。

(1)

「美しい国土」、「豊かな社会」、「安全にして安心できる生活」を創り出し、改善し、発展させるためにその技術を発揮する。

(2)

現在および未来の人々の安全、健康、福祉に対する責任を自覚し、自然および地球環境の保全と活用を図る。

(3)

伝統技術を尊重しつつ、先端技術の研究開発、国際交流の進展に努め、相互の文化を深く理解し、人類の福祉高揚と安全を図る。

(4)

土木事業の永年性、大規模性、不可逆性を踏まえ、技術者としての謙虚さを堅持すると共にその責務を自覚し、職務を遂行する。

(5)

土木施設・構造物の機能、形態、および構造特性を理解し、その計画、設計、建設、維持、あるいは廃棄にあたって生態系の維持、美の構成、歴史的遺産の保存に努める。

II.倫理遵守の基本原則

 我々は、技術者の誇りと良心に照らして次の行動をとることを倫理遵守の基本原則とする。

(1)

自らの専門とする技術領域において専門とするサービスを提供する。(専門とするサービスの提供)

(2)

専門家としての考えを公にする場合には、客観的かつ真実に即して表明する。(事実にもとづく表明)

(3)

依頼者と緊密な信頼関係のもとで誠実の理念に則り、法令を遵守し、公共の福祉のために依頼者の適正な利益を保護する。(依頼者の適正な利益の保護)

(4)

法令を遵守し公正に競争する。(公正な競争)

(5)

他者と利害関係が生ずる場面においては、確固たる信念と誠実さをもって解決をはかる。(信念の保持)

(6)

専門家としての責務を全うできなくなるような事態を、信念と勇気をもって回避する。(利害相反の回避)

(7)

技術成果の権利を正当に帰属させ、他人の権利を侵さない。(帰属権利の尊重)

(8)

提供するサービスの正当な価値を高め、専門家としての研鑽・努力を欠かさない。(自己の研鑚)

(9)

専門家として広く社会に貢献するため、市民団体、学会、協会等の活動に積極的に参加する。(社会活動等への積極的参加)

III.行動規範

 我々は倫理遵守の基本原則をふまえ、技術者としての良心に恥じないよう、次の行動規範を誠実に守る。

(1)専門とするサービスの提供

a.

自分の専門とする技術領域と資格を明示し、それに合致していると確信する業務のみを遂行する。

b.

依頼を受けた業務に対しては、専門とする技術的応用能力に立脚した調査・分析を行い、科学的な論理性をもって最善の提言を行う。

c.

署名は自らが計画、設計、監督、管理した業務に対してのみ行う。

(2)事実にもとづく表明

a.

技術的判断に関して、事実でない、事実を隠した、不適正または誇張された表示・表明を回避する。

b.

専門家としての考えを報告、表明、または証言するにあたっては、それらに関連する客観的なデータと真実の情報をすべて開示する。

c.

正確な情報、客観的なデータ、技術的裏付けのもとに専門家としての意見を確信をもって表明する。

d.

利害関係者から教唆された事項については、表明、批評、あるいは主張を行わない。

(3)依頼者の適正な利益の保護

a.

依頼者からの要請を引き受けた場合には、専門家として適正な技術力、注意力、そして勤勉さをもって業務を遂行する。

b.

いかなる場合においても、依頼者の不利益につながるような第三者と利害関係を持たない。

c.

業務を通じて知り得た依頼者の秘密を、第三者に漏らしたり、別の業務に盗用することをしない。

(4)公正な競争

a.

客観的な事実根拠に基づくことなく、同業者または他の専門家の業務成果を中傷、誹謗、批判しない。

b.

悪意または偽って、直接または間接に、他の専門家の名声、将来性を貶めたり業務の遂行や雇用を妨害しない。

c.

業務を確保するために不当な対価を第三者に直接または間接に与えることをしない。

d.

他の専門家が行った業務を再調査するよう依頼された場合には、品位と礼節をもって行動する。

(5)信念の保持

a.

自らに非があることを知ったときは、技術的良心に基づいて素直に自分の誤りを認め、事実をゆがめたり、改変したりしない。

b.

調査・研究の過程で業務の所期の目的を達成できないことが明らかとなった場合には、その旨を依頼者に通知する。

c.

適用すべき技術基準に依らないで欠陥を生む恐れのある計画、設計等への署名・捺印を依頼者が固執する場合には、正当な権限のある者に通知し、そのプロジェクトにおけるそれ以上のサービスを中断する。

(6)利害相反の回避

a.

特定の製品や工法を成果品に指定する場合にあっても利益が得られる者から設計等の支援を受けない。

b.

経費の節約、工期の短縮あるいはその他の事情により、結果的に人々や依頼者の安全、安心、信頼を損なうような提案を行わない。

c.

関連しているプロジェクトにおいて、当該利害関係者が存在する場合その同意を得ることなく、自らが相手方の利害関係者として参加することをしない。

(7)帰属権利の尊重

a.

可能な時はいつも、計画・設計、文書、プログラム、またはその他の著作物に著作権を有する者の氏名を記載する。

b.

依頼者が供給する設計成果等を利用する場合には、依頼者の許諾を得ることなく複製しない。

c.

業務遂行の過程で提案する計画、設計などが著作権または特許に該当する可能性があると判断できる場合には、事前に依頼者と協議し、必要な法的措置を講ずる。

(8)自己の研鑽

a.

自己の専門能力の向上に向け、生涯学習を実践する。

b.

実務に携わって後進の指導育成に励みつつ、自己の専門とする技術の持続・発展に努める。

c.

進んで他の専門家との技術交流に努める。

(9)社会活動等への積極的参加

a.

自らが共同社会の一員であることを自覚し、市民行事、文化活動等の地域にかかわる安全、健康、福祉の増進活動に積極的に参加する。

b.

専門家の立場で広く地域に貢献するため、(社)建設コンサルタンツ協会、(社)土木学会などの学会活動および(社)日本技術士会などの団体の活動に積極的に参加する。