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織を立ち上げるとともに、サポートセンター(介護保険)事業者、地元医師、保健師や生活相談員(LSA)、行政、大学関係者で構成する「まちづくり協議会」を設置し運営している(図4)。●在宅医療とサポートセンター特筆すべきは、仮設住宅と在宅医療を含む地域包括ケア各地へ展開との連携である。当仮設住宅地では、まず地元病院の協力により診療所が週2.5日開設されており、プライマリケアが確保されている。また、震災以前から釜石医師会が在宅医療の推進を図っていたため、かかりつけ医による訪問診療も行われている。特に2012年度から釜石市は在宅医療連携拠点事業に取り組んでおり、釜石医師会と強力に連携して体制づくりをしている。さらに、高齢者の生活を支援する拠点(見守りと介護予防)として、サポートセンターを併設している。サポートセンターの生活支援員らが朝晩2回、仮設住宅を回り声掛けしている。イベント時には、閉じこもりやすい人に声をかけて誘い、配食サービスなども実施している。サポートセンター運営を担う株式会社ジャパンケアは、公募によって選ばれた。サポートセンターではデイサービスだけでなく、24時間365日対応の訪問介護・看護を行っている。また、当該仮設住宅地だけでなく地域全体へのサポート機能を担っているのである。●コミュニティケア型仮設住宅の成果仮設住宅地内のケアゾーンの高齢化率は約60%であるが、釜石医師会等によれば、平田地区仮設住宅の高齢者による病院への外来頻度が低下しており、介護予防にも一定の成果が見られると評価されている。また、仮設住宅には高齢者だけでなく、障害者やシングルファミリー(一人親家庭)なども暮らしているが、釜石市内のいずれの仮設住宅と比較しても、病院への救急搬送率が圧倒的に低く、社会生活基盤と空間環境基盤が合せて整備されたことの効果が表れていると評価されている。本ケースは仮設住宅での取り組みであるが、このよう特定地域におけるモデル実施イメージ在宅医療を含む地域包括ケアのシステムをつくり、仮設住宅地をモデルに試行事業を行い、災害公営住宅へと切れ目なく移設し、未来都市をめざす。復興市街地(モデルを移設)仮設住宅地(モデル事業)地域包括ケアの拠点(例:小規模多機能)図5特定地域におけるモデル実施イメージ既存住宅(被災してない住宅もカバーする)災害公営住宅(集合型、戸建型)地域包括ケアの拠点(サポートセンター)買物・生活の拠点(商店街)仮設住宅(ケアゾーン)な被災地での緊急的な対応に限らず、住まいとケアが一体となった取り組みは、今後全国的に必要となる。特に在宅医療を含む地域包括ケアの仕組みは、今から整備していかなければならず、このようなコミュニティケア型仮設住宅地をモデルに、高齢社会対応のシステムを持った災害公営住宅から復興市街地へと切れ目なく移設することが重要である(図5)。新しい手法の提案高齢化する都市部、そして復興後のまちにとって重要なのは在宅医療を含む地域包括ケアシステムである。このシステムが整備されて、ようやく高齢者の社会生活が安定する。社会生活が安定したのちに、復興後の住まいや暮らし方について考えることができ、本当の意味での復興が実現する。各地で区画整理や防災集団移転促進事業が進んでいる。自分の親が最期まで暮らせなかったまちは、若い世代からすれば早めに出て行きたいまちとなる。空間環境基盤は整ったが、誰も残らなかったということがないよう、行政は復興ビジョンのなかで、将来どういうまちを目指すのか、道路や堤防など空間環境基盤(建築・都市計画部門)だけでなく、社会生活基盤(主に保健福祉部門)との連携も合わせて検討する必要がある。Civil Engineering Consultant VOL.263 April 2014009