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既存の土木の文法に則った案が基本的に採用されることがほとんどだ。こうした踏み込んだ計画によって実現した環境が、冒頭で述べたような生活と業の一体感を醸成する場になることを期待したい。図3 10日間の活動で20 0頁以上の詳細なレポートが完成なる牡鹿半島勉強会が牡鹿半島を担当し、その支援を受けた雄勝スタジオ(東京藝大、日本大、東北大、立命館大)が雄勝半島をそれぞれ丁寧に整理し、復興の処方箋をまとめ上げている(図1~3)。これらは優れた内容のもので地域の復興を考える上で大きく役に立っている。しかしながら、復興事業は複雑で、彼らがボランタリーに取りまとめたレポートと最終的に調整された防災集団移転促進事業は、必ずしもスムーズに連結されているわけではない。図4は、アーキエイドの建築家(小嶋一浩+Y-GSA)が高台移転に関して提案したスキーマと土木コンサルタントの提案を並べたものである。建築家による案は、道路構造令や様々な基本ルールを守りながらもランドスケープを重視して地山なりに宅盤をすりつけた魅力的な構成ではあるが、法面が民地に面しているなど、その従来の公物管理の考え方とは異なる設定となっている。一方の土木コンサルタントの案は、宅盤を公有地(道路)で囲むことで法面の管理を容易にはしているが、外周道路、緩傾斜の宅盤、大きな法面から構成されるその環境は、土地の持つ特徴を必ずしも反映している訳ではなく人工的だ。このケースでは、物理的な造成や公物の管理に責任を持つ土木サイドと地盤を造成した後の人々の暮らしについて考える建築サイドが、ひとつのテーブルをはさんで根気づよく議論したことによって建築家の案を基本とすることとなったが、その他多くでは残念ながらショートスパンでの現実性から、災害と社会弱者東日本大震災で被災したのは、漁村集落だけではない。地方都市の中核的なエリアも大きな被害を受けている。災害は多くの人々に苦難を強い、その痛みは社会的弱者にとってより厳しいものとなることは良く知られている所であるが、この傾向は濃密なコミュニティや生活と業の密接な連関を持たない都市的な環境において、より顕著となる。例えば、都市内の木造住宅密集地域は、建物の倒壊が発生しやすいだけでなく、火災で被害が拡大する可能性も高い場所だが、これら災害に対するぜい弱性が高いエリアでは、高齢化率や借家率も高い傾向にある。阪神大震災で、大きな被害を受けた神戸市長田地区は、まさにそうした地域であり、多くの高齢者が実際に被害にあっている。さらにこうした厳しい状況は、発災直後に留まるものではないことも注意すべきポイントである。災害を潜り抜けた彼らが避難した先である避難所や仮設住宅は、プライバシーに欠けて狭く、夏は暑く冬は寒い。こうした環境は、健康状態に不安を抱える高齢者にとっては耐えがたいものだ。また環境変化への耐性が低い彼らにとって、元の居住場所から避難所へ、避難所から仮設住宅へ、そして仮設住宅から恒常的な住まいへとい図4土木コンサルタントと建築家による高台移転案の比較Civil Engineering Consultant VOL.263 April 2014011