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った変動は、大きなストレスでもある。第1回居住意向調査(2011年9月)第2回居住意向調査(2012年3月)社会的に弱い立場にある高齢者は、不明・未回答声掛けや見守りなどといった周辺の支えを介して、コミュニティに位置付けられてきた存在だが、ボランティアの関災害公営住宅与が比較的期待できる仮設住宅から、それらがあまり期待できず、コミュニティとの関係も希薄となりがちな復興公営住宅への環境移行は、問題をはら不明・未回答むことが多い。これら環境移行はなかなか厄介な問題で、複雑な様相を示すことが明ら被害が大かになっている。例えば阪神大震災では、人道的配慮を急ぐべきという声に押され、初期の復興公営住宅に、仮設住宅で不都合を抱えていた高齢者を優先的かつ集中的に入居させた施策が取られている。劣悪な仮設住宅の環境に苦しめられてきた高齢者を救うものとして、当初は評価されたが、次第に、誰かが具合が悪くなっても手を差し伸べる人がいない環境となる事例が頻出することが明らかになった。そもそもコミュニティは、様々な人から構成され、相互のメンバーが支えあう互恵関係を有しているものだが、支援を受ける人だけを集めてしまっては、そうした関係は期待しにくくなるのである。さらにこうした集団は時間の経過に対して弱い傾向にもある。状況の悪い高齢者を集中的に入居させた復興公営住宅が、コミュニティの劣化を早期に招き、最悪の場合は孤独死が頻出するといった環境になってしまいがちなのだ。宮城県七ヶ浜町における事例人口減少と少子高齢化に発災前から苦しんできた、東北の地方でおきた東日本大震災を、都市災害的な様相を持つ阪神大震災と単純に比較することは出来ない。また、南北500kmにも渡る被災地域では、それぞれの地域によって状況は異なっている。しかしながら、課題に対して何らかの構造的対応が求められていることは間違いない。そうした萌芽として、幾つかの自治体で進んだ方策が取り入れられているが、ここでは比較的復興が進んでいる宮城県七ヶ浜町の事例を紹介しながら考えてみたい。5kmの直径の円に町域がすっぽりと入る宮城県七ヶ浜町は、被災自治体のうち最小の自治体であるが、そのコンパクトさをいかして、様々な形で復興事業を調整して302131209280104災害公営住宅希望が最も多い。災害公営住宅から変化した61世帯を含め、現地再建希望が増加。現地再建別の場所防災集団移転災害公営住宅年齢が低い世帯の状況に係らず、居住意向を回答年齢が高い現地再建別の場所防災集団移転被害が小※第1回調査は、調査結果を元に該当する居住意向に分類災害公営住宅防災集団移転いる。中でも特筆できるのが、初期に行われた丁寧な情報提供だ。通常、被災自治体においては、不完全な情報提供は避けたい一方で、情報が確定するのを待っていては対応が後手に回るというジレンマを抱える。これに対し七ヶ浜町は、コンパクトな町域に加えて、七ヶ浜の名が示す通り、7エリアが自律的に連携する比較的強いコミュニティが存在しているため、これを活用し、町内に残る被災者に対して早期に徹底した情報提供を行ってきた。そうした情報提供は、自立再建を勇気づけ、公営住宅数を抑制することに繋がっている。町が行った居住意向調査のデータから、それを具体的に見てみよう(図5)。被災世帯を対象に行われた、第一回居住意向調査(2011年9月)と第二回居住意向調査(2012年3月)の結果を比較してみると、第一回調査では、復興公営住宅の希望が最も多いが、第二回調査では現地再建の希望が増加している。つまり、第一回では、年齢や被害の程度によって居住意向に違いが見られない。すなわち、自分たちにどの復興メニューがふさわしいか良く分からずに答えているのだが、後の第二回調査では、被害が小さい層が現地再建、年齢が高い層が復興公営住宅、比較的年齢が低い層が防災集団移転事業と、それぞれの状況に適合した選択がなされている。特に復興公営住宅から現地再建に居住意向が変化している世帯が61世帯にも上っている。こうした変化は、第二回調査の前に、町が開催した地区説明会、意見交換会、個別相談会に依る所が大きいと考えられる。219240187304現地再建別の場所防災集団移転災害公営住宅防災集団移転→比較的年齢が低い層被害が大年齢が低い年齢が高い図5二回の意向調査における変化(佃悠(東北大学)らの分析による)現地再建別の場所現地再建→被害が小さい層災害公営住宅→年齢が高い層被害が小012Civil Engineering Consultant VOL.263 April 2014