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図6外観予想図(S住宅設計:阿部仁史アトリエ)図7共用空間予想図(S住宅設計:阿部仁史アトリエ)図8外観空間予想図(H住宅設計:関空間設計)図9共用空間予想図(H住宅設計:関空間設計)個別相談会などによって住宅再建メニューに対して理解が深まったことで、それぞれの世帯の状況に合わせた選択が出来るようになったのである。コミュニティ形成支援型復興公営住宅こうした、適切な情報提供を介した正確な居住意向数の把握は、防災集団移転促進事業と復興公営住宅整備事業の必要戸数を早期に把握することを可能とし、迅速な住宅復興施策の策定につながっている。一方でそれは、復興公営住宅入居者を福祉サービス必要層に純化する。つまり居住者に占めるお年寄りの割合を高くするリスクも抱えている。これに対して、七ヶ浜町は、前段で述べたような住宅整備数の抑制で生まれた余地を活用しながら、コミュニティが持続可能な復興公営住宅を整備するという方向性を開拓している。近隣が声がけし易いような構造をもつ住宅群を整備することで、阪神大震災で起こった状況を改善しようというものである。こうした住宅は、従来型のものとは異なるために、能力ある専門家(設計者)の参画が不可欠であり、住民の合意・協力も欠かせない。そこで町では、設計にワークショップを加えた仕様書に基づいて、公募プロポーザルを実施した。図6~9は、実際に住民が合意した復興公営住宅の完成予想図だが、各住戸は縁側的要素を持つなど、コミュニティへの配慮が図られている。また、これら復興公営住宅の整備は、数を絞り込んだとはいえ、町の財政規模からすると規模の大きい普請であり、設計・建設の管理に関わる業務負荷は無視できない。この課題に対して町は、宮城県復興住宅整備室の全面的な支援を受けることで、リスクヘッジを計っている。このようにして、各段階で適切な手段を選択しつつ、全体として質の高い復興を実現しようとしているのが、この町の特徴である。もちろんこの町においても、様々な問題や課題が日々発生しており、復興の道のりはまだ途についたばかりである。特に被災地における建設費の信じられない高騰は、丁寧な復興を心掛けてきた町の戦略に大きな影を落としている。今後は、様々なプラットフォームを活用することで、こうした困難に対抗しうる復興のノウハウを他自治体とも広く共有していくとともに、復興に関わる貴重な人的資源や時間が、形式的手続きのために蕩尽されてしまわないよう、計画実施を適切に管理していく方法を練り上げていくことが重要となるに違いない。Civil Engineering Consultant VOL.263 April 2014013