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NHKが被災三県(岩手、宮城、福島)沿岸部の27市町村から聞き取り調査を行ったところによると、東日本大震災における障がい者(障害者手帳所持者)の死亡率は、一般住民全体の約2倍だったと報告されている。日本障害フォーラム(JDF)幹事会議長の藤井克徳氏は、この点について、既存の防災政策が障がい者への配慮を欠いていたのではないかと指摘した。陸前高田市に関して言えば、震災による死亡率は市内全人口に対して7.2%(24,246人中1,750人)、障がい者に限ると9.1%(1,368人中124人)。その割合は1.3倍で、言及されている2倍ほどの差は見られない。これは障がい者の入所施設の多くがもともと高台にあった結果ともいえるが、防災上の配慮により、これら立地がなされていたとは言えない。弱者も含め多くの犠牲者を出した経験を踏まえ、陸前高田市の戸羽太市長は障がい者を含め誰もが安心して暮らせるまちづくりを目指し、「ノーマライゼーションという言葉のいらないまち」をビジョンに掲げた。このビジョンは、市長が若い頃米国で見た、障がい者もそうでない方も一緒になって人生を楽しんでいる姿から発想したものだ。ニューヨークで開催された「災害と障害者」をテーマとした国連関連行事に参加藤井氏は自身も視覚障がい者で、共同作業所の設立に関わった経験などから、国内外に広く障がい者施策の必要性を訴えている。そして、陸前高田市が目指す「ノーマライゼーションという言葉のいらないまち」というビジョンについて高く評価する一人だ。その藤井氏から、2013年9月に米国ニューヨークで開催された「災害と障害者」をテーマとした国連関連行事において、被災地の現状や課題、そして「障がいのある人もない人も暮らしやすい街」を目指す陸前高田市の復興ビジョンについてスピーチしないかと誘われた。現状では、ビジョンはあっても復興にはまだほど遠い状態で、ビジョンの具体化には至っていない。正直言って、報告するには早すぎるとも思われた。しかし、国内でも東日本大震災の記憶の風化が進む中、海外では尚更である。被災地の現状を発信することにも意義があるのではないかと考え、職員の佐々木敦美・まちづくり戦略室主査を伴ってニューヨークを訪問し、被災地からの特別報告(プレゼンテーション)を行った。「ノーマライゼーションという言葉のいらないまち」の具体策とは?ニューヨークのフォーラムにおいて、アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁(FEMA)の職員と思われる方から質問の手が挙がり、「ノーマライゼーションという言葉のいらないまちを目指して庁内の勉強会や研修、車椅子体験などの取り組みを始めたことは評価するが、そのビジョンを実現する具体策として何があるのか?」と問われた。これについて答えたのが次の3点である。写真2?ニューヨークの国連本部写真3 ?ニューヨークで訪問した、精神障がい者が自由に情報を得たり勉強できるクラブハウス。明るい雰囲気で非常に設備が充実していたのが印象的。前列中央が藤井氏、右端が佐々木主査、左端が筆者Civil Engineering Consultant VOL.263 April 2014019