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Consultant_263

巻頭言Consultants建設コンサルタントが未来を担うために長谷川伸一一般社団法人建設コンサルタンツ協会副会長土木工学は英語で「Civil Engineering」と言い「市民のための工学」と定義される。工学的技術をもって社会資本整備を担う「建設コンサルタント」の原点はここにある。歴史的には住民が自らの生活や営みを守るために、河川の氾濫を防ぎ、水の流れを利用し、道路やトンネル等を造るという、生活に密接に関わる技術の成果を為すことであったものだが、現在ではそのことが見失われているのではないだろうか。建設コンサルタントは公共事業を実施する中で、社会の安心・安全で快適な暮らしを維持し、経済基盤を支える職業として、若い技術者が誇りを持てる仕事であった。しかし何時の頃からか、建設業界は一般社会と接点を持たず、エンドユーザーに接することなく、働く技術者の顔が見えない中で、「キツイ、汚い、危険」の3K産業の代名詞といわれるに至り、職業としての魅力を失ったように思える。我が国の国土が、使い勝手の悪い急峻な地形と豪雨や豪雪、台風や地震の多さ等の厳しい自然条件にある中、建設コンサルタントの成果は公共施設全体のコストを左右し、建造したものは長期にわたる機能維持が求められる。そのため、技術者達は叡智と経験のもと、機能性と安全性、経済性の並立するインフラ整備に貢献してきた。それにもかかわらず、一般には土木と建築が混同され、建築士が職業の寡占性を定めた国家資格であるのに対して、技術士は国や自冶体等から土木業務を受注するのに必要な資格に止まり、一般社会の土木と建築の誤解も含めて建設コンサルタントの認知度は圧倒的に低い。しかし昨今、防災・減災のためのインフラ整備、老朽化したインフラの長寿命化や更新による国土強靭化、東日本大震災の復興の加速化に向けた機運が高まってきている。また、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致を契機に、未来の利便性や安全を確保する新たなインフラの価値創造が求められており、建設コンサルタント業界もようやく、将来を見通せる状況になった。さらに、改正『公共工事品質確保促進法(品確法)』は、品質確保のための中長期的な担い手の確保、多様な契約入札制度、技術者の適切な評価と活用に踏み込んでおり、この法制化が技術力、技術者のあり方と経営改善を含めて、業界を一変させる可能性がある。ただし、建設コンサルタントの地位向上のためには、価格競争や著作権、請負、資格・業法等の課題が多く残っている。建設コンサルタントが信頼され、夢と希望、誇りを持てる産業として自立し、若い優秀な人材が集まるような魅力を見い出せなければ、業界が困るのではなく、志を持った若者が土木技術者を目指さなくなり、その結果優れた土木技術を未来に継承できなくなることが、ひいては日本の損失につながる。社会資本が誰のために、何が求められているのかを考え過ぎるあまり、必要なものを見過ごして悔やむより、土木技術者として自信をもって、必要なものは必要であるとの姿勢に立つべきではないだろうか。必要性については、プロセスと効果の両面から「見える化」進めることで、これまで培って来た土木技術やそれを物語る既存の土木資産の価値が再認識されるだろう。その結果、国土の安心・安全と経済基盤を支え、その上に日常生活を成り立たせている土木の仕事が、社会から見直され感謝されるようになるだろう。建設コンサルタントは一般社会からかけ離れた特別な職業ではなく、日常生活に密着した職業である。我々はどのような社会環境においても、普遍的に必要な役割を担うことが求められているとの原点に立ち、まず自らが誇りと信頼性を持つ必要がある。社会に優良な結果を残し、未来の安心社会を担保するのが、インフラ整備と建設コンサルタントであるとの理解が得られなくては、また過去の厳しい時代に逆戻りしかねない。一人一人が、今を最大の機会と捉え、新たな認識のもとに行動すれば、必ず「未来を担う魅力ある仕事」としての土木を実現できると信じている。