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■津波の河川遡上対策津波による浸水被害は海岸線からだけでなく、河川内を伝搬し、堤内地へ浸水する場合もある。写真1は、東北地方太平洋沖地震津波発災直後の宮城県石巻市内を流れる旧北上川河口周辺の状況である。津波の河川遡上によって甚大な被害が発生したことがわかる。遡上時には船舶等の漂流物を伴うこともあり、河川周辺に住宅地が密集しているような地域では、津波の河川遡上対策が今後の課題となる。津波の河川遡上も津波シミュレーションによって検討されることが多い。『津波の河川遡上解析の手引き(案)』(国土技術センター)によるT.P.+(m)76543210-1-2-3-4現況堤防高(右岸)計画堤防高計画高水位現況堤防高(左岸)平水位計画河床高と、津波の河川遡上は、波源域から沿岸域までの伝播過程を再現し、河川内の予測には横断方向に5メッシュ程度の地形データを用いて行うものとされている。また、河川水位は不等流計算によって得られる平常時の水位を考慮することが一般的となっている。このようにして得られたシミュレーションの結果は、浸水予測図や河川縦断方向の最大水位として整理され、現況堤防高や計画堤防高に対する検証を行い、必要に応じて対策工を検討する。対策工としては、水門で津波の遡上を遮断する方法や、堤防高の不足箇所の嵩上げ等が考えられる。鵠沼A橋龍宮B橋稲荷C橋日の出D橋No.1+0.0No.14+0.0No.22+10.0No.30+13.9最大水位(浸水計算なし)現況河床高-5-1000100200300400500600700No.-5No.0No.5No.10No.15No.20No.25No.30No.35追加距離(m)図5津波シミュレーションの結果(津波最大水位の縦断図)■おわりに防災緑地や河川遡上対策の他にも、津波避難タワーや道路を利用した津波対策が各地で行われている。津波避難タワーの構造検討では、鉛直方向の波圧分布を求める必要があり、既存の津波波圧公式が適用できない場合は、3次元の解析が可能なシミュレーター「STOCK/富田・柿沼(2005)」や「3次元の数値波動水槽CADMAS-SURF/3D(2010)」(沿岸技術研究センター)等のモデルを利用することも多くなってきている。ただし、3次元解析では、解析時間やデータ作成に多大な時間と労力を要することがあり、プログラムの並列化や検討ケース数の絞込み等、効率的な検討が必要である。<参考文献>1)?後藤智明・佐藤一央(1993):三陸沿岸を対象とした津波数値計算システムの開発,港湾空港技術研究所報告vol.032, No.02, pp.3-44.2)河合弘泰・佐藤真・川口浩二・関克己(2011):GPS波浪計で捉えた平成23年東北地方太平洋沖地震津波、海岸工学論文集、Vol.67, pp.1291-1295.3)富田孝史、柿沼太郎(2005):海水流動の3次元性を考慮した高潮・津波数値シミュレータSTOCの開発と津波解析への適用、港湾空港技術研究所報告vol.044, No.02, pp.83-98.4)Mansinha, I., Smylie. E.(1971): TheDisplacement Fields of Inclined Faults, Bulletinof Seismological Society of America, Vol.61,No.5, pp.1433-1440.5)Okada,Y.(1985): Surface deformation due toshear and tensile faults in a half space, Bull.Seism. Soc. Am., Vol.75, No.4, pp.1135-1154.対策工嵩上げ図6津波の河川遡上対策のイメージ対策工水門Civil Engineering Consultant VOL.263 April 2014039