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商専用列車なのである。カイラン線沿線は昔から石炭がよく採れ、石炭輸送のために建設された路線のため貨物輸送が主となっている。今回乗った列車は、ハノイから3駅先のイェンヴィエンを4:40に出発して164kmを約7時間半かけて走り、終着駅のハロンには12:08に到着する列車である。7時間半というのは、長すぎず短すぎず日帰りもできて、ちょうどよい乗車時間である。この列車に乗るためには、ハノイ中心部のホテルを早朝4時に出発しなければならない。タクシーに乗って20分ほどでイェンヴィエン駅周辺に着いたのであるが肝心の駅が見つからない。運転手も駅の存在を知らないようで、地元の人に尋ねて何とか辿り着いた。イェンヴィエン駅は旅客駅というよりは貨物駅のような構えだったので、見つからないのも無理はない。イェンヴィエンからハロンまでの運賃は60,000ドン(約240円)である。イェンヴィエンで出発を待っている間に上り列車が通過していった。おそらく中国からの国際列車であろう。先日ザーラム駅に留置してあった車両と同じであった。イェンヴィエンを夜明け前の定刻通りに出発。車内には数人の乗客がいるだけで、朝早く起きたことも手伝って、しばらく居眠りをしてしまった。空が白み始めてからは車窓に目を凝らす。車窓からは田んぼで作業をする人、家の前で朝ごはんを食べる人、バイクで出勤する人など、ベトナム人の生活が垣間見られた。3時間ほど走って、7時半頃にケップ駅に到着した。ここで進行方向が変わるため15分くらい停車した。その間に乗客が多数乗り込んできた。そして野菜や米のほか、生きた豚や鶏などの荷物写真12ウォンビ付近の平面交差も積み込む。機関車を付け替えると同時に空の無蓋車を20両ほど増結した。マオケまでは混合列車としての運行である。マオケ付近には石炭鉱山があるため貨車を回送しているのであろう。ハノイからケップまではドンダン線を走っていたが、ケップからが本来のカイラン線である。ドンダン線は標準軌といえども、メーターゲージとの三線軌であるが、こちらは純粋な標準軌である。ケップ駅での停車中に車両をじっくり見学したが、いつの時代かというほど使い古されたアンティークな客車であった。ケップからしばらく走り、8時半にランマウに着いた。ここでも荷物の積み込みがあったが、前時代的な風景にタイムスリップしたような気がした。まだハノイから100kmそこそこだというのにローカル色豊かである。次のマオケは沿線でも比較的大きな町なのでホームも賑やかになった。火力発電所もあり石炭の恩恵を受けて大きくなった町である。連結されていた空の無蓋車はここで切り離される。ケップで積み込まれた豚もここで降ろされた。ウォンビという町には鉄道と鉄道の平面交差がある。石炭鉱山から積出港までの貨物線とカイラン線が直角に交差している。日本でも昔は平面交差が多くあったが、路面電写真13 乗客と荷物で一杯の終点ハロン駅車の廃止とともに少なくなった。ハロンにはほぼ定刻通りの正午過ぎに到着した。レールはまだ先のカイラン港まで延びていたが、とりあえず旅客列車はここまでだ。線路が新しかったので建設中なのであろうか。このままハロン駅にいれば13時に上り列車としてイェンヴィエンに戻れるのであるが、駅裏にあるバスターミナルからハノイ行きバスに乗った。運賃は90,000ドン(約360円)と少し高くなるが、所要時間が鉄道の半分以下の3時間なので、地元の人はバスを使うのであろう。本数も多く、15分に1本くらいの頻度で運行していた。おわりにベトナムの鉄道に関しては列車遅延が常態化しているだろうと思って覚悟を決めていたのであるが、意外にも時間に正確であった。また、車内で出会う人たちも親切で、3ヶ月滞在したにもかかわらず、トラブルは一切なかった。時間の正確さと治安の良さは日本に相通ずるものがある。ベトナム人は勤勉な民族であるといわれるが、その通りかもしれない。現在8,000万人超の人口を抱えるベトナムは経済成長の真只中である。外国からの投資も増え、インフラも着実に整備されていくだろう。新線建設や高速化で、ベトナムの鉄道の発展に期待したい。Civil Engineering Consultant VOL.263 April 2014051