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図4水路を冒険する様子事例は少ないように感じる。そのため、特に維持管理において先人の知恵を取り入れていくことが必要だと感じる。先人の知恵といっても技術面とシステム面に大別できると考えられる。技術面では風土建築に見られるように、その地域の気温や湿度、風向き、地下水の有無等に考慮した部材や様式などが挙げられ、維持管理に重きを置いた社会資本の部材選択や形式の採用に応用できると考えられる。例えば、整備される社会資本のコンクリートの含有成分や間隙率、水分量などを当該地域に長期間存在している伝統的建造物の部材の値を計測し、参考にするなどが考えられる。そして技術面よりもむしろ今後はシステム面の応用が重要になってくると考えられる。なぜなら、維持管理にとって最も重要なことは日々の点検や補修であるからである。針江のカバタでもそうであったように、当時は生活に欠かすことのできないものは神聖化され、住民たちの手により日々維持管理がなされてきた。このような自治システムを現在に応用することで、厳しい財政状況の中でも、民間や行政の負担を増やすことなく、安全・安心な生活を支えていくことができるはずである。例えば、水郷集落で失われている水路の活用を現代に合った形で再生することが考えられる。モータリゼーションや生活様式の変化に伴い水利用が減っている滋賀県東近江市伊庭町では社会実験として田舟の光景再現や川床の設置が行われている。水路に入ることで、普段とは違う水路内からの視点で集落を見てもらい、水路の価値を再発見することを目的としているが、今後水路の利用が促進されれば普段は見えない橋裏や道路等を眺めてもらい、僅かな異変に気づいてもらうことも可能となる。このように、失われている地域の文化や歴史を再生し、維持管理に応用することはまちづくりと一体的に考えることができ、事業の複合化・高度化を目指す土木業界にとっても重要な方策となるのではないだろうか。提案2地域活性化の顔としての自立型社会資本さらに、まちづくりと一体的に社会資本整備を考えることは、地域活性化に寄与するところが大きいと感じる。近年国の補助事業はまちづくり関連のものが充実してきている8)。厳しい財政状況の下、社会資本整備に関する資金を調達する一手法として、まちづくり関連の補助事業を活用することが考えられる。地域の顔として住民と共に社会資本を整備することで、普段の維持管理を住民に担ってもらいやすくなるのではないだろうか。さらに、地域活性化の核として社会資本を位置づけることで、社会資本を目当てに来訪する人が増え、それに伴う経済的影響が生じるであろう。観光客が訪れることで、間接的ではあれ交通や購買活動によってその地域にはお金が落ちる。それらのお金の一部を社会資本整備費として蓄積するファンドをつくることで整備や維持管理費用を賄うことができないだろうか。つまり、社会資本を地域活性化の顔とすることで、ある範囲に存在する社会資本はそれら自身が自らに掛かる維持管理費を確保できるのである。言わば、自立型社会資本である。提案3有機体としての社会資本整備アセットマネジメントでは効率的な維持管理を目指し既に社会資本のネットワーク化が行われているが、図5地域の顔としての社会資本とFundの概念図(筆者作成)図6社会資本の有機的ネットワークの概念図(筆者作成)076Civil Engineering Consultant VOL.263 April 2014