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その範囲は大きくても都道府県単位となっているようである9)。これらの市町村、都道府県、民間企業レベルで管理されている社会資本のデータを全て繋ぎ、一つの有機体として管理していくことが必要だと感じる。公共事業費の効率的な利用のためには、管理主体間の連携が必要不可欠であり、このような体制作りが今後望まれる。また、前述の自立型社会資本を支える地域ごとのファンドも互いに連携を取り、有機的なネットワークを形成していくことが必要であろう。提案4格に応じた適切な役割と責任先人の知恵の蓄積と応用、地域活性化の核、有機的なネットワークとして社会資本を整備する提案を行ったが、その前提として重要になってくるのは二章で触れた『社会資本整備の格』を意識することだと感じる。社会資本整備には住民、行政、民間等が関わるが、その関わり方、果たすべき役割や責任、それぞれの負担は格に応じて変動するはずである。近年住民参加や民間資本の導入が盛んに行われているが、何でもかんでも同じように導入してはいけないだろうというのが私の言いたいことである。もちろん住民参加は必要であり、厳しい財政状況の下PFIやPPPのように民間資本を導入することが重要であることは間違いない。しかし、その導入の仕方や導入する分野を決まったやり方、青写真で行ってはいけない。なぜなら、格を意識しない社会資本整備はその土地のアイデンティティを奪うだけでなく、その土地の自治を破壊しかねないからである。住民ができる範囲まで民間が行ってしまうと、住民活動が減り自治が弱体化する。これは極めて危険なことである。維持管理の主体を住民に担ってもらうことはとても重要であり、今後の維持管理の在り方に関わってくるはずである。その自治を破壊するのではなく強化させるような民間資本の導入が今後の課題ではないだろうか。おわりに-これからの社会資本整備を担う一若者として-個人的なことではあるが、私は来年からコンサルタンツの一員として社会資本の整備に関わっていくことが決まっている。そのため今回の「社会資本整備の在り方」というテーマの懸賞論文は、言わば私の今後の技術者人生における心構えを自分自身に問いただす絶好の機会となった。少子高齢化、厳しい財政状況、多発する自然災害に直面するいま、如何にして安全・安心な社会資本を整備し、日本を元気にできるかという問いに対する答えは様々な問題を複雑に孕んでおり、自分なりの答えを見つけるには非常に苦心した。しかし、社会資本整備の在り方を考えている内に一つの疑問が生じた。確かに効率的な維持管理方法を考えることは今後益々重要になってくることは誰の目にも明らかであるが、それらを巡る議論の中で我々の目的が社会資本整備に終着してしまっているのではないかいう違和感を覚えたのである。社会資本整備の先にある人と自然の在り方を考えることこそが社会資本整備の在り方を真に考えることではないか。人と自然の在り方を考えることで今後の社会資本整備に求められることが見えてくるのではないだろうか。この考えに行き付いてからは、人と自然の関係を基に社会資本整備の在り方を考えることとした。そしてその考えは本論で述べた通りである。本論は、現場を知らない一学生の単なる思い付きに過ぎないかもしれない。問いに対して求められている答えとは少し外れていることを述べたという印象は拭いきれない。しかし、私の声から今後の社会資本整備の在り方に対して何か示唆を与えることができればと思い、考えたことをありのまま述べた次第である。今回の論文を書くに当たって多くのことを考えさせられ、社会資本整備の在り方と共に『コンサルタンツとしての在り方』を考えることができた。最後にこのような機会を技術者人生を歩み始める前に与えてくださった建設コンサルタンツ協会の方々に心から感謝したい。稚拙な文章に最後まで目を通して頂きありがとうございました。参考文献・注1)?人間環境宣言,環境省ホームページhttp://www.env.go.jp/council/21kankyo-k/y210-02/ref_03.pdf2)?風土-人間学的考察-,和辻哲郎,岩波文庫,19793)文化的景観,文化庁ホームページhttp://www.bunka.go.jp/bunkazai/shoukai/keikan.html4)?景観用語辞典,篠原修編,彰国社,19985)?産業教育機器システム便覧,日科技連出版社,19726)?矢守克也,「津波てんでんこ」の4つの意味,自然災害科学Vol.31,No.1,20127)21世紀の社会と科学技術を考える懇談会―中間報告について―,文部科学省科学技術会議,20008)民間まちづくり活動促進事業制度要綱,国土交通省,20139)港湾施設のアセットマネジメントに関する研究,国土技術政策総合研究所,国総研研究報告NO.29,2006Civil Engineering Consultant VOL.263 April 2014077