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特集都市と公園?これからの公園に求められる能力?3大災害から都市を守る加藤孝明KATO Takaaki東京大学生産技術研究所都市基盤安全工学国際研究センター/准教授一般的に避難場所として公園が指定されている。今後予想される首都直下型地震や南海トラフ巨大地震などの都市を襲う大規模災害時の拠点として、その公園の役割が見直されている。どのようなことが考えられ、どのような整備が進んでいるのだろうか。大災害から守るということの意味「大災害から都市を守る」ことは都市の公園の役割として必須である。そもそも大災害の本質は、被害の密度と量にある。高密度となる避難者や救援ニーズによって生じる混乱、膨大な被害に伴う緊急対応ニーズが被災地内の対応能力を大幅に超えることが大災害の根幹である。密度を緩和することと、被災地外からの大量の支援を被災地全体に行き渡らせることが大災害時の対応の肝である。大災害への備えとしては、脆弱な市街地を改善することが根本対策ではあるが、一朝一夕では進まないことは歴史が証明している。とすると、現存する市街地の脆弱さを前提とし、それを緩和することが大災害への備えの中核となる。高密度な被害への対応としては、公園という、災害に対して本質的に安全な空間を脆弱な市街地に組み込むことが重要な視点となる。それによって街全体の被災密度を緩和できる。換言すれば、周辺の脆弱さを公園によって補強できる。密集市街地におけるポケットパーク、延焼危険性の高い地域における広域避難場所はその一例である。一方、支援の量への対応としては、被災地外からの応援、資源を被災地域に投入できるシステムを都市の中に組み込む必要がある。その一部として支援活動の拠点、受け入れる側から見れば「受援拠点」とも呼ぶべき空間を組み込むことが重要な視点である。さらに平時の物流システムと同じように、都市圏域全体、都市全体、そして街レベルというように階層的に組み込むことによって、外部からの支援を効果的・効率的に行うことができるようになる。次に「守る」ことの意味を改めて考えてみたい。「守る」という意味は、1命を守る、2避難生活を支える、3円滑な復旧・復興を支える、という3つのフェーズで捉える必要がある。災害に直接起因するものだけではなく、その後の劣悪な避難生活での死、いわゆる災害関連死を防ぐことも不可欠である。災害関連死は、阪神・淡路大震災では、直接死5,483人(兵庫県)に対して919人、東日本大震災でも直接死15,884人(この他に行方不明者2,626人。2014年3月6日現在)に対して2,916人(2013年9月30日現在)と無視できない数字である。さらに阪神・淡路大震災で社会問題化したように仮設住宅での孤独死も重要な課題である。避難者に負担の少ない被災生活、仮設住宅居住者の円滑かつ速やかな復興を支援することも間接的ながら命を「守る」ことの不可欠な要素である。いずれにおいても公園やオープンスペースが重要な役割を担う。1では、地震火災や津波等の各種ハザードに対して安全な空間を提供すること、消防活動や救援活動といった災害の拡大を防ぐための活動の拠点空間を提供すること、緊急交通路の確保のための道路啓開に伴う瓦礫の仮置き場として機能し、円滑な活動を支援すること、2では、支援を含めた物資の供給拠点として機能すること、復旧資機材の置き場として機能し、速やかなライフラインの復旧を支えること、3では、震災瓦礫の仮置き場として機能し、速やかな復興を支えることが挙げられる。さらに、河川敷や河川のような線的なオープンスペースは、緊急時の交通路としても機能する014Civil Engineering Consultant VOL.264 July 2014