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香港の九龍公園内での高齢者2010年6月に香港で開催された「高齢者・障害者の移動と交通に関する国際会議(TRANSED 2010)」に参加した時、九龍半島の繁華街に接する大きな「九龍公園」があったので散歩しました。公園内には多くの高齢者が気ままにベンチに座って過ごしており、中には囲碁に興じる高齢者がいて、その周りには見学する高齢者がいました。その屋根付きベンチが公園内に長屋の様に設置されており、必要十分なベンチが確保されています。公園内には噴水のある庭園があり、香港の雑踏から出てホッと出来る静寂な空間がありました。また「足裏のツボマッサージ歩行路」があり、裸足になって凸凹した石の上を歩きました。日頃裸足で歩いていないためか、足裏は酷く痛くて悲鳴を上げました。さらに遊具があるので行ってみると、なんと高齢者の運動器具でした。この器具で身体機能を維持させようとしているのでした。そして遊具を使用中に転倒しても安全なように、地面は柔らかなゴムで覆われているのです。九龍公園がある地域を含む香港の旧工業地域の貧困高齢者の研究をしている林昭寰は「香港政府の老人センターよりも公園や街頭での時間を過ごすのを好む傾向が男性回答者の間で強かったことから、老人センターの活動を施設内に限定せず、公園や街頭で展開すること」を提言していました(文献1)。スウェーデンでの4輪歩行車利用の状況高齢者・障害者の交通機関の研究でスウェーデンを何回か訪問しました。その際にルンド大学のアグネタ・シュタール教授(交通計画学)に「フレックス・ルート」について講義を受けました。フレックス・ルートとは、フレキシブルなサービス・ルートの呼称です。個別交通のきめ細かな利便性とバス車両による効率性を組み合わせたサービスとして位置づけられています。その後、実際に小型低床バスに乗り込み、途中で4輪歩行車を使用した高齢者が乗り込んできたので、話を聞いてみました。80歳を越えたこの男性は、バスを利用して毎日街の中心に一人で出て、友達と昼食を楽しんでいるとの事でした。我々のグループの中にいたセラピストによると、「日本では一人で街に出ることは不可能な身体状況である」との事でした。高齢者が多く住んでいるこの地域のフレックス・ルートは、170m間隔でバス停を設置し、高齢者が自宅から歩いてバス停に行けて、行った先でも出来るだけ近くに停車し、運転手が適切な介助で送り届けてくれるシステムです。実はこのバスだけではなく、町中どこでも4輪歩行車を使用して歩道を歩いている高齢者に高頻度で出会えました。その時、スウェーデンのまちづくりが完璧なので、高齢者が4輪歩行車で外出できるのだと理解しました。帰国してから確認すると、スウェーデンでは人口の4%程度の人が4輪歩行車を使用しており、これは医療と福祉が協力して、高齢者の転倒事故を防ぎ、さらに外出を促進して体力の維持(日本では「介護予防」)を目指した施策であると知りました(文献2)。そして、シュタール教授は大学の作業療法士と協働で4輪歩行車の有効性についての研究論文を出しており、フレックス・写真3 ?シュタール教授が開発したフレックス・ルートの小型低床バス写真4 ?運転手が降車を手伝い、高齢者の外出抵抗を低くしている024Civil Engineering Consultant VOL.264 July 2014