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巻頭言Consultants維持管理・更新時代の建設コンサルタント西谷正司一般社団法人建設コンサルタンツ協会常任理事私達の生活を支える社会インフラは、多くが戦後の高度経済成長期に集中的に整備されて来ました。このため、今後20年で建設後50年以上経過する施設の割合が、道路橋では約18%から67%へ、トンネルでは約20%から50%へ、水門等の河川管理施設では約25%から64%へと急速に増大し、老朽化に伴う重大な事故や致命的な損傷の発生が危惧されています。一方、このような背景から社会インフラの維持管理・更新の重要性が指摘されて来たものの、厳しい財政状況による公共事業費削減が続いた結果、対応が遅々として進まず、問題や課題が山積しています。1980年代の『荒廃するアメリカ』(1930年代に大量供給されたインフラはやがて劣化が限界に達し、1967年のシルバー橋の落橋や1983年のマイアナス橋の崩壊などの惨事に繋がりました。その後道路財源を拡充して維持管理・更新を強化しましたが、一度荒廃したインフラの機能を回復するのは難しい。)に代表されるように、インフラ施設は人工構造物である限りやがて風化・劣化し、十分なメンテナンスがなければ予想以上の速さで安全性が低下して行きます。このような背景もあって、2012年12月に発生した笹子トンネルの天井版落下事故を契機として、国を挙げて今後の維持管理・更新の在り方が検討され始めています。このため、建設コンサルタンツ協会では社会資本維持管理対策検討推進本部を立ち上げ、現場ニーズに基づいた維持管理の在り方について検討を進めています。特に解決すべき課題として、1保全事業の体系化、2健全度の評価基準や補修・補強設計の技術基準の整備、3継続かつ的確な維持管理を担保する人材育成と仕組みの整備、などに重きを置いて取組んでいます。今までのインフラ整備は、新規建設が優先されて来た結果、定期的な調査・点検結果で著しく劣化した施設の「事後的対応の維持管理」が主体でした。このままでは、限りある予算の中、老朽化が急増する全ての施設に対応することは難しいため、利用度の低い施設の統廃合や優先順位付け等の選別も必要となって来ています。ただ、地域生活に密着するインフラ施設の選別は、新たな施設の増設や住民の合意形成など、実現に際して解決すべき課題もあるため、まず施設に早期補修を施し延命化を図る「予防保全」の観点を積極的に導入し、必要な機能を維持しつつ将来の維持・更新費用を抑制できる長寿命化計画の策定が全国的に進められようとしています。この予防保全では、その評価の基礎となる調査・点検のデータ管理や実用的なモニタリング技術の導入および診断における健全度評価基準の統一化が重要だと考えています。また、既に限界に達した施設に対しては、早期の抜本的な補修・補強に必要な劣化部の詳細調査手法や補修設計の技術基準などの整備も重要です。これらの課題は、産官学連携して取り組んでいく必要がありますが、特に予防保全による長寿命化対策では、建設コンサルタントの活躍が大きく期待されるところです。一方、更に問題なのは、大多数のインフラ施設の管理者が予算及び担当技術者の少ない地方自治体、特に市町村であることです。例えば、橋梁では約70万橋(橋長2m以上)の約94%、河川管理施設では約3万施設の約65%を地方自治体が管理しています。各地域の施設は、それぞれ置かれている環境や重要度に応じて持続的かつ柔軟に対応する必要があるため、複数年の維持管理包括契約方式などの行政をサポートする仕組みが今後導入されて行くと考えられ、このようなマネジメント分野でも建設コンサルタントの積極的な参画が期待されています。インフラ施設の維持管理は、対象施設毎にその構造上の特性や建設から現在に至る劣化履歴が異なるため、いわば生まれと生い立ちを良く理解した上で適切な処方箋を作成する難しさがあります。しかし、困難な障壁があるほど、それに挑戦する時に技術の進歩があり、その延長線上にインフラの保全事業での新たな領域の拡大と重要な役割を担える建設コンサルタントへの発展があると思います。