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写真6公共水栓カンビア・タウン内に100ヶ所の公共水栓を建設した。住民は自宅から片道100m以内で水汲みができる写真7水の運搬水汲みはシエラレオネでも伝統的に女性の仕事である。水の運搬距離が短縮され、水汲み労働が大きく軽減されていると考えられます。しかし、水源の河川は雨期の半年間とその後の数ヶ月間は濁度が高く、薬品処理を行わない緩速ろ過法では対応できないと考えられてきました。本プロジェクトは、河川の他に浄水場の近くにある「スワンプ」を水源とすることでこの問題を解決しています。スワンプは日本語で「沼」です。地形的に低い位置にある湿地で、乾期は濁っていてほとんど流れはありませんが、雨期には清澄で豊富な地下水が流出します。本プロジェクトでは、雨期で河川の濁度が高い時期はこのスワンプから、乾期になって河川の濁度が下がりスワンプの流量が減少する時期は河川から取水することで緩速ろ過法の導入を可能にしています。その他の工夫として、カンビア・タウンは公共の電力供給がなく、浄水場の運転には発電機を使用することになりますが、発電機の燃料費が水道事業の運営経費の60%以上を占めるため、エネルギー効率の良い施設配置とすることやポンプ等の動力負荷を分割することで発電機の必要容量と燃料費を抑えています。また、住民に給水サービスの利便性を実感してもらうため、すべての世帯が片道100m以内で水汲みができるように公共水栓を配置するとともに、給水量、水質、水圧などの面でも住民の満足が得られる施設としています。これらの技術面での工夫の結果、本プロジェクトは一人一日1円以下の水道料金で給水できる施設とすることができました。■運営・維持管理体制の整備本プロジェクトでは給水施設の建設と並行して、国際協力機構(JICA)の技術協力スキームによる運営・維持管理体制の整備が行われました。私は本プロジェクトの業務主任に加え同スキームの個別専門家として同業務に従事しました。シエラレオネでは内戦後、地方分権の国家政策に沿って地方政府へ給水に係わる責任と権限を移譲する政策をとっています。本プロジェクトも同政策に沿ってカンビア県議会が本プロジェクトの運営・維持管理体制の整備を行いました。当時、給水の地方分権化と言っても、関連する法律がまったくないため、まずは同県議会に県条例を制定してもらって、本プロジェクトの運営・維持管理を行う水道公社を設立することにしました。県議会によって任命される理事を除いた同公社のメンバーとして、施設の運転や事務管理を行う職員、料金徴収を行う集金人など総勢23人を公募で採用し、必要な教育や訓練を行いました。水道料金の徴収は、カンビア・タウンの全戸に登録証を設置してデータベース(台帳)を作成し、同登録証の顧客番号によって料金の支払いを管理する方法としました。また、これらの活動に並行して、水道料金の支払いに係わる住民への啓発活動も行っています。カンビア・タウンで給水が行われていたのは約30年前で、当時は無料で給水が行われていたため、水道料金を支払った経験のある住民は皆無です。啓発活動では、住民説明会の開催、地元のラジオ局を活用した啓発メッセージのジングル(5分程度の番組を朝夕繰り返し放送)やラジオ討論会、啓発看板の設置などを行いました。■現在までの評価本プロジェクトは2013年1月に竣工し、翌月から営業運転を開始して030Civil Engineering Consultant VOL.264 July 2014