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徒歩避難者の妨げとならないように避難経路を選択自動車徒歩10鰐川0人/69人10鰐川64人/69人9谷原4人/347人全ての避難者が避難開始後、30分以内に避難完了地区名避難困難者の人数/各地区の人口※避難困難者:避難時間が30分以上の避難者避難が30分以上かかる避難者が分布※避難開始時間:発災後10分※自動車避難速度:9km/h(東日本大震災の実績値より設定)10鰐川35人/69人●:被災者分布位置地区名被災者数/各地区の人口※被災者:H23想定津波から逃げ遅れた避難者8長栖478人/ 688人※避難開始時間:発災後40分(H23想定津波)7泉川16人/ 264人図5自動車避難結果(鰐川エリア)図6津波遡上を確認してから避難■検討4避難行動の啓発検討高松地区の住民へ津波避難行動に関する啓発を行うため、津波避難シミュレーション動画を活用した各種検討を行った。●津波遡上を確認してから避難高松地区において、仮に、避難者(健常者)が津波遡上を見てから避難した場合(発災後40分に徒歩避難を開始)における避難シミュレーションを行った(図6)。その結果、北公共ふ頭周辺から鰐川エリアにかけて、津波から逃げ遅れる避難者が広く分布することとなった。住民に対しては、津波の遡上を見てから避難した場合は、被災するリスクが高く、発災後、可及的速やかに避難を開始する必要があると啓発する必要がある。●住宅密集地での自動車避難比較的多くの避難者が分布する長栖エリアを対象に、鰐川エリアと同様に、自動車避難を行った場合の問題点を抽出する検討を行った。自動車避難の対象者は、長栖エリアの避難困難者とし、その他の避難者の避難方法は、徒歩避難とした。長栖エリアのように、避難者が多く分布する地域において、自動車で避難する場合には、以下の課題があり、地域住民全体が安全に避難するためには、原則徒歩による避難行動の徹底が必要である。・自動車は、徒歩に比べ避難速度は速いものの、避難開始後、初動段階で、自動車による主な避難経路となる国道や県道に流入する際、渋滞が発生し、それに巻き込まれて津波から逃げ遅れる可能性がある。・国道や県道を使わずに細街路を自動車で避難する場合は、他の徒歩避難者と混在し、避難の妨げになる。●要援護者を対象とした避難健常者より歩行速度が遅くなる要援護者を対象として、発災後10分で避難開始した場合の避難シミュレーションを実施した。なお、個人情報保護の観点から、高松地区の全ての避難者を要援護者として設定した。検討の結果、発災後10分に避難を開始した場合でも被災する可能性がある。また、本来、自動車避難が望ましくない長栖エリアでも、要援護者が避難するためには、自動車を利用した避難を検討する必要がある。■おわりに東日本大震災の津波被害を受け、鹿嶋市は高松地区を対象に、津波対策の検討を進めてきた。今回、津波避難シミュレーションによる詳細な検討を行い、避難困難な地域を抽出し、現在、計画中の防災公園の設置効果の検証や、自動車による避難方法の検討などを行ったことで、これまで進めてきた津波対策の検討の妥当性を把握することができた。また、地域住民の方々への津波避難を啓発するため、津波遡上を確認してから避難、住宅密集地での自動車避難の危険性や、要介護者への支援の必要性などを、津波避難シミュレーションの動画を活用することで、視覚的に分かり易くした。今回の検討結果を踏まえ、今後は、高松地区の地域の実情に応じた津波避難計画の策定や、実効性の高いハードやソフトの対策を提案していく予定である。<参考文献>1)?「2011.3.11東日本大震災の記録」(平成24年6月、鹿嶋市)2)?「津波浸水想定について」(平成24年8月、茨城県)3)?「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ(第一次報告)」(平成24年8月、内閣府中央防災会議)の「南海トラフの巨大地震建物被害・人的被害の被害想定項目及び手法の概要」を参照。4)?「2011年東北地方太平洋沖地震津波への津波避難行動シミュレーションの適用性(国土技術政策総合研究所資料No.742 2013年6月)5)「?津波防災まちづくりの計画策定に係る指針(第1版)」(平成25年6月、国土交通省都市局)6)?「津波被災市街地復興手法検討調査(とりまとめ)」(平成2 4年4月、国土交通省都市局)Civil Engineering Consultant VOL.264 July 2014035