ブックタイトルConsultant_264

ページ
45/66

このページは Consultant_264 の電子ブックに掲載されている45ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

Consultant_264

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

Consultant_264

写真7?トンネル内の勾配標写真8?トンネル内の待避所写真9 ?トンネル内のレール間にある排水路る。この甲府側の入口上部には「大日影トンネル遊歩道」と記されたパネルが埋め込まれている。このパネル以外は建設時のままで、とがった形の石が積まれている坑口のアーチが美しい。中は夏でも涼しく、温湿計は温度18℃、湿度83%を指していた。甲府側近くでは隣のトンネルを通過する電車の轟音が聞こえ、レールが敷いてあるトンネル内では臨場感がある。約1.4kmの直線トンネルは出口側を見通すことができ、レールは廃線時のもので、両脇は歩きやすいようにバラストが固められている。レンガの壁や天井は蒸気機関車から出た煙により煤けており、指で触ると真っ黒になる。蒸気機関車がまだ現役の頃を知る私にとって、急勾配のトンネルを黒煙を吐きながら、時には砂を撒きながら車体を揺らし、必死になって登っている姿を想像すると、煙を吸いたくない気持ちと再び見てみたいと思う気持ちが交錯する。南側の壁には保線作業員用の中小の待避所が34カ所ある。北側の壁には大きい待避所が2カ所あり、現在は木製ベンチを置き、中央本線や大日影トンネルの歴史を紹介したパネルなどが展示されている。東京側に向って約25‰の登り勾配になっており、その勾配標や東京駅からの距離標などの鉄道標識、連絡用電話機が設置されている。中央付近ではレンガ積みが花崗岩の石積みに変わるところがある。これは断層によって岩盤が弱い所を補強したとのことである。また、中間地点から東京側には湧水対策としてレール間に開水路がある特殊な構造となっている。全国的に水路のあるトンネルは少ないが、この地域の地質条件が悪くトンネル施工で苦労したことが想像できる。2010(平成22)年頃から漏水が多くなり、冬季には大きなつららが出来るようになった。そのため一時トンネルを閉鎖して調査し、排水用の横ボーリングや裏込め注入などを行うなどの漏水を止める対策を施した。■ワインの香りと先人の知恵旧大日影トンネルの東京側坑口先には深沢トンネルがあり、同様の理由で廃線となった。このトンネルは、面白いことに2005(平成17)年にワインカーヴとして蘇った。四季を通して安定したトンネルの環境はワインの熟成には最適で、しかも多量のボトルが貯蔵できる。地場ワイナリーや個人オーナーの大切なワインを保管している。これらのトンネルは、壊さずに長く利用するとともに、先人の知恵を知り、熟成させ、後世の人々に味わってもらいたい。<参考資料>1)?『大日影トンネル遊歩道』甲州市観光交流課2)?『写真で見るふるさと勝沼』勝沼町文化協会1998年勝沼町3『)?勝沼町誌』勝沼町誌刊行委員会1962年勝沼町役場4)?『日本鉄道史』鉄道省1921年5)?『何がトンネル技術を発展させたか』今田徹2004年財団法人先端建設技術センター6)?国土地理院ホームページ(http://www.gsi.go.jp/)<取材協力・資料提供>1)?甲州市観光交流課<図・写真提供>P44上、図1、写真2茂木道夫図2株式会社大應作製写真1、6、8、9塚本敏行写真3、4甲州市観光交流課写真5、7近藤安統Civil Engineering Consultant VOL.264 July 2014043