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写真1 ?住民合意形成の様子(右側説明者が?市川氏)写真2サンゴ礁起源の砂浜写真3 ?結婚式での伝統舞踊(手前中央が市川氏)ですから、今後は自分たちの力で実施する、ということもなかなか伝わりませんでした。本来は調査から施工まで、極力自国で調達すべきですが、限られた自然条件、人材能力では難しいものがありました。そして、ツバルでは、行政を担当する政府関係者とは別に、日常生活を司る長老グループや、漁師グループ、母親グループなどのコミュニティがあり、さらに上下関係や地元のしきたりがあり、これらを踏まえた上での地元の合意形成が必要で、その調整などでいろいろ苦労しました。島自体は観光客も少なく、海の自然豊かな景色が満喫できます。未開発で、美しい海の景色は今まで見た中では群を抜いた美しさでした。Q4.海外業務だとやはり語学力が気になりますが。A4.そうですね。基礎的な英語力はもちろん大事だと思いますが、それよりももっと大事なのはコミュニケーション力だと実感しています。特にツバルの案件では政府関係者だけではなく、地元住民との合意形成を得ることが大事でしたから、何度も話し合いの場を設けました。そこでは専門的なことをいかに易しく伝えるか、何を伝えるかではなく何が伝わるか、ということが重要になります。プロジェクトの進捗状況に応じて、今何を伝えなければいけないのかを明確にし、より平易に伝えることを心掛けました。話し合いの場では、時間はかかりましたが、1センテンスずつ、英語から現地語、現地語から英語へと通訳してもらい、一方的に話すのではなく、意思疎通を確認しながら話し合いを進めました。例えば、母親グループは長老グループと一緒だと発言力が弱くなるため、別々に話し合わなければならず、さらに時間を要することとなりましたが、このような国の文化、慣習なども理解した上でのコミュニケーション能力が何よりも重要です。Q5.海外業務と国内業務との違いや魅力は何でしょうか。A5.私の専門分野は海岸、港湾関連になりますが、日本では改良や維持管理が主な業務内容になると思います。対して海外では、どの場所から整備するのか、といったゼロからスタートする新規案件が多くなります。調査から始まって、解析、計画、設計、施工監理まで一貫して見ることができます。日本では技術の細分化、分業化が進み、プロジェクトもパーツごとに携わることが多いですが、海外案件は業務期間が長く、腰を据えて業務全体に取り組めるのが魅力だと思います。私は、数年国内業務に従事し、ある程度の基礎知識や業務の進め方を学んだあと、海外業務に従事しました。国内業務で得た知識や経験が今の業務にも非常に役立っていると感じています。?まとめ「海岸を守りたい」「海外で仕事をしたい」という自分の思いを明確に持ち、それを実現し仕事に取り組んでいるお話からは、仕事のやりがいと満足感を感じることができました。地元との話し合いでの苦労話の他に、食材が限定的であったり、水不足の問題があったりと生活面でも苦労が多かったようですが、それに勝るやりがいを得ているのだな、と聞いている側がワクワクするようなお話でした。今、国内でいろいろな仕事をしている皆さんも、建設コンサルタントの海外業務にちょっとでも興味があるのなら、その興味を一歩前に進め、これまで培った知識と経験を海外の人に伝えて、現地の人たちの技術力アップに一役買ってみてはいかがでしょうか。きっとこれまでにはない、得難い何かに触れることができるのではないでしょうか。Civil Engineering Consultant VOL.264 July 2014053