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芦原自分たちの街を「こうしたほうがいいよね」「このほうがきれいだね」という答えが、だんだん積層していくことが大切ですね。水を活かす大島私の専門は河川工学で、河川の水質を良くするためにどうしたらいいか取り組んできました。じつは、東京オリンピックの時は隅田川がものすごく汚れていて、応急処置として浄化用水を緊急用水として、まず利根川から荒川へ、さらに隅田川の上流の新河岸川へと流して、臭いが出ない程度に水をきれいにしたのです。芦原オリンピックに向けて、そういうことをやられたのですね。大島オリンピックの後、実際に隅田川の浄化検討をやらせていただきました。私の個人的な夢は2020年の東京オリンピックの際に、こんなに大都市なのに水がきれいだということを世界に見せることができたらと思っているのですが、それはもう間に合わないでしょうか。芦原まだ大丈夫です。大島隅田川くらいならできるかもしれませんが、本当は東京湾で泳げるようにしたいです。こんなに大きな都会のなかで、すぐそばに泳げるところがあるといいなと思います。ヨーロッパに行くと、水辺を大事にしている様子を見ることができますからね。芦原そうですね。都市の中にある水辺を大切にしています。大島テムズ川も水は汚いですが、いろんな船が行き交っていて、夜も結構賑わっています。東京でも水辺の地価が高くなっていますし、地形を考えると水質ももちろんですが、水辺の空間をもう少しきれいにして活用することもひとつのテーマと思います。いろいろな提案や工夫をすることは、市民の共感を得るでしょうし、いいことではないかと考えています。芦原私もオリンピックを機会に、水辺を復活する方向で東京の街ができてくるというのは、すばらしいことだと思います。私の自宅は代々木上原で、すぐ脇に玉川上水がありますが、1964年のオリンピックの時に全部暗渠になってしまいました。昔は玉川上水からあふれてくる水や、新宿御苑から出てくる水、どこかのお屋敷から湧き出る水が、集まって海まで行っていたのが、いまは暗渠になっています。童謡『春の小川』に歌われた渋谷川を復元していこうと運動しているグループもあります。そのように具体的な環境が少しずつ変わってきて、水辺がより身近な場に出てくると、自分たちの環境が良くなったという意識が働いて非常に分かりやすいです。そしてそれが部分部分の点ではなくて、ネットワークでつながってきます。大島川というのは線ですからね。芦原線が面になって広がっていきます。ただ、東京都が蓋をしてしまった川を一部でも開ける秘策を、オリンピックを機会に始めてはどうでしょう。大島局部的には簡単にできます。チョンゲチョン芦原ソウルの清渓川のような大きな国家プロジェクトとして進めるのも、もちろん大事ですが、それではなかなか動かないので、もう少し身近なところでできるといいですね。大島ひとつの川だけでも再生することができればと思います。芦原今度のオリンピックに向けて、とても大きな新国立競技場が建ちます。じつはあの周辺が新宿御苑からくる水系の場所なのです。ですから、オリンピックを機会に暗渠を小川に復元してきれいな環境をつくれないものでしょうか。大島ちょうど開催されるのが夏ですから、やはり水があるほうがいいですね。日本橋川の上の高速道路を、ソウルのように外してみたらどうかという話も現実に出ていますが、オリンピックまでに具体化することは、なかなか時間的に間に合わないでしょう。芦原高速道路のシステムまで全部変えることは、ちょっと大変です。大島ただ、そのようなことを私たちのほうで議論して、こういうことができるのではないかと示して、市民の皆さんや地域の方に訴えていく。そして地域の方が参加する形で、例えば再生や復活するようなことをやれば、ものすごく盛り上がるのではないかと思います。2020年ですから、あと6年くらいですね。芦原そういうステップから、だんだんその先につながっていって、東京の水系が復元していくのも魅力的ですね。大島その時は、ぜひ両協会合同でいろいろな検討や提案をして、できるだけ多くの他の団体の方とも関わっていきたいと思っています。土木と建築――両協会が合同で検討や提案をできればと思いますが、どうも一般には建築と土木やコンサルタント、エンジニアはあまり仲が良くないと思われています。この対談を機会に、日本人として協働してできることをいろいろ考えていきたいと思います。056Civil Engineering Consultant VOL.264 July 2014