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芦原たしかに、大学でも土木と建築は分かれていて、そもそも違うものだという教育を受けてきました。社会に出ても土木と建築は別と見なされていますし、行政の発注も土木と建築では明らかに別物ですよね。大島私はいまマンションに住んでいるのですが、ある日その理事会に出席して奥様方と話をした時のことです。「世の中は建築と土木の分野がある。簡単にいえば建築は建物で、建物以外の例えば橋梁などのいろいろな構造物は土木がつくる」と話したのです。そうしたら「ウソでしょう。建築の人が考えて、土木の人はつくるだけでしょう」と言うわけです。「ああ、なるほど。こんなふうに勘違いされているんだな」と思いました。「いや、違うんです。ちゃんと土木も設計しているのです」と言いましたが…。芦原確かに一般の方の認識はそうなのかもしれません。大島土木が何をしているのか、よく理解していただけていないのは、我々にも努力が足りないのかもしれませんね。市民の皆さんに理解してもらわないと話が進まないことも多くあります。例えば道路などをつくる時には住民の皆さんの意見を聞きますし、一番そういう仕事で大きなものはまちづくりでして、いろんな住民の方に関わっていただき、その中で私たちの仕事を説明して理解していただかなければなりません。ぜひ建築の方々と一緒に住民の皆さんにPRして、一緒につくっていくことを考えていきたいと思っています。芦原建築関連5団体(日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会、日本建設業連合会、日本建築学会)で、いま建築・まちづくりを一緒に手を携えてやっていこうというところまでは来ています。建築・まちづくり、そして国づくりという中で、いろいろなレベルがありますが、全部つながっているわけです。そこでは土木とも手を組んでいく必要が大いにあるでしょう。おそらく、まちづくりのところで一番合流してくると思います。「美しい景観」と言っても「日本の景観はこれだ」と一義的に言えるわけはなくて、それは、それぞれの地域の中で一つひとつ考えていくことです。そういう面でも、確かにオリンピックは特に土木と建築、地域が絡むし、国民がみんな見ているという国という部分でも絡むし、ちょうどいいタイミングですね。協働の方法――まちづくりに対しての仕組みや仕掛けを、実際にどういうふうに両協会が協働すればいいでしょうか。そこをクリアにしないといけません。芦原例えば、私どもが考えているひとつは災害復興です。東日本大震災では一気に街が壊滅してしまいました。街というのは土木・建築、あるいは一つひとつの建物だけではなくて、全体がつながっていたのだと住民は分かっています。それを復興したいという強い思いがあります。具体的には、復興CABEと言っていますが、CABEのような形で復興活動ができないかと、個別でJIAの会員がいま頑張っています。災害復興まちづくり協議会のようななかに、建築家や土木の専門家など、いろいろな人たちが入って市民と一緒に自分たちの街をこうしていきましょう、という議論をすでに始めているところもあります。しかし、制度的にはなかなか進んでいません。仮設住宅や防波堤をつくる話にとどまっていて、街全体をどううまくつくっていくか市民の合意形成を含めて、いろいろな専門家がうまく協力し合う形にまだあまりなっていません。何か突破口になるような具体的な成功例をつくっていけないかと考えています。もし良い成功事例ができれば、別にこれは災害復興のみならず、ごく普通の街も、自分たちのまちづくりを考えるなかで、建築だけでは駄目で、都市計画・土木、いろいろな専門家が一緒になって、少しでも良くしていく運動につなげていく形にしたいなと思っています。大島賛成ですね。実際にJCCA会員の会社が現在、そのようなまちづくりに、いろんな形で関わっているのです。いわゆるCMr(コンストラクション・マネジャー)として町や市のために、いろいろ技術的なアドバイスをしたり、調達のお手伝いをする場合もあります。その際、ボランティアのような慈善事業ではなく、対価を得ながらどのようにプロジェクトのなかに入っていくのかを考える必要があります。例えば建築家が主体でやっているプロジェクトに土木の人が入るとか、土木が主体のプロジェクトに建築の人が1人入ってもらうとか、そういうことをお互いにチャンスと捉えていくのはどうでしょうか。具体的なところで探してみるのがいいかもしれないですね。芦原一つひとつ個別にいろんなものが動いていますが、地域はひとつですし“Built Environment”は全部つながっているわけですから、それらの個別で動いているプロジェクトを市民と一緒にうまく進めていくような、そんなまちづくり協議会に僕たち専門家が入って、手を携えられるといいなと思います。Civil Engineering Consultant VOL.264 July 2014057