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報酬を出せる仕組みを――業務を協働していく際、大島会長のおっしゃるように、ボランティアというわけにはいきません。作業の報酬が必要になりますから、行政が出せるような仕組みを考えていかなければならないですね。芦原先ほどイギリスのCABEや災害の際の復興CABEの例を挙げましたが、いまJIAとしては、そのような仕組みとして日本版CABEをつくっていこうとしています。現在あるまちづくり協議会のように、行政と市民と専門家が一緒になって、自分たちの地域の問題を具体的にいろいろ考えていく、特に景観問題などに関して地域の中で議論していく場をつくっていかなければなりません。それにJIAも応援したいと思いますが、そのために公的なお金が出るような仕組みを、ぜひ行政につくってもらわないと長続きしません。イギリスの場合は、国がお金を出してCABEという組織をつくり、その組織が各地域のまちづくり協議会のようなところに人材やノウハウを支援したりしています。日本でも、いままでの縦割りルートではなく、地域の市民たちに役に立っている専門家には、市民側からお金が出せるような流れをつくらないと、なかなか土木と建築が一緒にならないのではないでしょうか。ぜひ、CABEが市民の代わりにお金を出せるようなシステムができるといいと思います。そのようなシステムを、国がやるのか、各都道府県がやるのか、いろんなレベルがあると思いますが、公的なお金がそういう地域の環境問題を考えるところに投入されて、そこで市民が初めて参加する。そのように説明すれば市民は分かると思います。役所は「情報は全部公開してある」と言いますが、それを見ても市民には何のことだか分かりません。でも「あなたの街のここがいまこのようになろうとしています」とか、「この場合、こういうことが考えられるし、もしそうでないとすれば、こうなんです。どうでしょう」というように具体的にちゃんと話をしていけば、市民も入ってこられます。そうなるとたぶん、市民も「こんな景観は嫌だ」というような率直な声が出せます。しかし、単に突然「景観についてどうですか」と言われても、答えようがないですよね。ですから、そこまで準備をしてお膳立てをするような制度や仕掛けを行政でも考えてもらいたいし、私たちのような専門家団体も、支援や協力をしたいと思っています。そこで、ぜひ、土木とも協力していきたいですね。次世代につなぐ――都市が縮退化していくなかで、日本の未来をつくっていくために、次世代につないでいくことをいろいろと考えないといけません。芦原いわゆる量的拡大に成長する都市ではなくなったわけですね。それでは、これから縮小といっても、縮んで消えてしまえばいいのかというと、そうではなく、持続可能性を考えながら、これからは都市生活の質的向上を図るべきだと思います。その時に、結果としてある種の縮小があったにしても、先ほど大島会長がおっしゃられたように、東京の水系が少しずつ復元され、大きな水の流れができて、環境がきれいになってくる。あるいは、東京には皇居の緑と日比谷公園、神宮外苑、明治神宮、新宿御苑など、意外に豊富にある緑がネットワークとしてつながってくるなど、大きなビジョンをもってスタートを切れれば、次の世代でも「この水系は最後は海まで流してあげよう」とか、「この緑のネットワークを小鳥たちも行けるようにしよう」とか、そういうなかで建築・土木がうまく入り込むことができるのではないでしょうか。結果はコンパクトですが、小さくするのが目的ではなく、素敵なクオリティをつくっていくのだという話の糸口が見えたら、次の世代も大喜びで頑張ってやってくれるのではないでしょうか。「何をしても駄目なのでは」と閉塞状態になるのは困るので、2020年のオリンピックを機会に、そういう環境づくりがアジアの東京で始まったと、ぜひ言いたいですね。大島形をつくれば次世代の人もその意味が分かり、勉強することでそれを引き継いでいける、あるいは発展していけると思うので、そのきっかけのようなものをつくっていくことが大事です。つながりというか、線をつくっていくことは、いろいろな人に参加してもらううえで非常に有効な方法だと思います。そういう意味で私は専門の水とつながります。おっしゃるように、東京の緑の多さは大阪などと比べてもよく分かりますね。昔の水辺をつなげて緑の線にしている市がありますが、そのような試みをしても、それを周りの人や次世代の人にも意味が分かるようにしないといけません。そのような仕掛けを常に考えていくことが「継承」であって、大事なことではないでしょうか。芦原次世代につなぐという意味では教育も重要です。JIAでも、子どもに向けた建築の教育や、いろいろなワークショップを行っています。例えば2011年に世界建築家連合(UIA)の東京大会が行われた時には、子ども向けの建築やまちづくりの活動や教材を広く公募し、優れ058Civil Engineering Consultant VOL.264 July 2014