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ているのだ(図4)。リサイクルしやすいように、製品には「循環グレード」なる評価が付けられている。カフェにある机や椅子なども、リサイクルしやすいように釘や塗料を一切使わない仕上げになっており、素材を徹底的に使い尽くしやすいように配慮されている。パーソナルモビリティカフェを出て時計を見ると、約束の時間まであと約20分。待ち合わせ場所まで、ここから歩くのには少し遠い距離だ。そこで、レンタル用「パーソナルモビリティ」を借りることにする。パーソナルモビリティとは、一人乗りの移動装置のことだが、いとおか市では徒歩圏の移動を補助するものとして広く普及している。高齢者はもちろんのこと、移動の多い外回りの営業マンなども活用しているようだ。低速で移動するものから、里山にも入っていけるオフロードタイプもある。いとおか市の中心区域はバスなどの公共交通や歩行者しか立ち入れないようになっているが、ここでレンタルされているのは中心区域も移動できるタイプだ。行きたい方向を意識するだけで移動できるので、初めてでもすぐに使いこなせそうだ。一人乗りヘリコプター取材を受けてくれるのは、いとおか市に住む一家だ。待ち合わせに指定された住宅街の一角に到着した。迎えに来てくれるのはその家の高校生で、「空野ハル」という女の子だ。どこから現れるかと辺りを見渡していたら「初めまして~」と声がした。なんと、頭上からである。彼女は「一人乗りヘリコプター」に乗っている(図5)。これにはさすがに驚いた。「帰るのが遅くなってしまって、高校から直接ここに来ました」と彼女が言う。いとおか市の高校生の多くは、一人乗りヘリコプターに乗って通学しており、機体にデコレーションなどをほどこし、自分なりにカスタマイズして楽しんでいるそうだ。自宅に案内してもらった。彼女の父親は、市内のリサイクルプラントに勤めており、明日、彼女が通う高校を取材させてもらった後に向かう予定である。ここまで驚きの連続であったが、明日はさらにどんな驚きが待っているか楽しみである。図5 女子高生が乗る一人乗りヘリコプター(Designed and Directed by Yohei Taneda cmiraikan)たった36年後のことさて、2050年のいとおか市はいかがだっただろうか。誌面では、2050年に社会実装されているだろう先端科学技術のいくつかをご紹介した。まだまだ紹介したいものがたくさんあるが、続きは未来館の展示でご覧いただきたい。これらの科学技術の中には、すぐに社会へ導入するのが難しいものがたくさんある。その一方で、すでに開発が本格化し、実用化の近いものもある。2050年は今から36年後のこと。自分自身はもちろんのこと、子どもや孫の世代であれば当事者として迎える「遠くない未来」である。決して他人事ではないのだ。逆に、今から36年前はどうだっただろうか。日本は高度経済成長が終わり、安定成長期に入った時代であった。今のような携帯電話すらまだない時代である。そのときに、スマートフォンが一般に普及し、多くの人がインターネットを活用するとは、ほとんどの人たちは思っていなかったはずだ。いとおか市では、現時点では研究中や開発中の科学技術が当たり前のものとして社会に浸透している。それを可能にしたのは、それぞれの科学技術の本質を理解し、それを受け入れて活用しているいとおか市民一人一人の選択である。これからの36年は、今まで以上に早いスピードで様々な科学技術が社会に導入されていくであろう。それを使ってどのような社会にするかは、私たちの「選択」にゆだねられている。<参考文献等>1)?日本科学未来館常設展示「2050年くらしのかたち」(http://www.miraikan.jst.go.jp/exhibition/future/living/lifestyle2050.html)2)?「2050年くらしのかたち」特設サイト(http://life2050.jp/)3)?未来館・展示活動報告Vol.5常設展示「2050年くらしのかたち」2013年3月発行(http://www.miraikan.jst.go.jp/aboutus/docs/exhibition_activity_report_05.zip)Civil Engineering Consultant VOL.265 October 2014023