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図4 ?部屋から部屋へ図5 ?燃料電池(http://www.gas.or.jp/fuelcell/contents/01_2.html)ンジンを降ろして燃料電池を搭載したものであり、外見は既存車と変わらない。2014年末、この状況は大きく変わる。500万円程度で売り切りの専用車体を持った燃料電池車(図3)が販売されると報道されている3)。原油の枯渇が心配される中、クリーンな排気ガスしか排出しない燃料電池車は未来の自動車の切り札と目されている。もちろん、電気自動車と違い、一度の燃料充填で走れる距離はガソリン車と遜色ない。でも、これだけではガソリン車の単なる置き換えである。消費者にガソリン車を上回る利便性を提供できなければ普及はしない。「駅から駅」「ドアからドア」を超える利便性とはドアを越えて行き来するという利便性である。これを「部屋から部屋」と呼ぼう(図4)。ガソリンの爆発をベースにしている内燃機関に比べて、水素と酸素の反応をベースにしている燃料電池(図5)は騒音も、振動も軽微である。そして、なにより排気ガスは水しか含まない。亜硫酸ガスも一酸化炭素も窒素化合物も含まない。これなら、屋内で使用しても問題無い。「駅から駅」「ドアからドア」という言葉から分かるように、利便性とともに小型化が新しい交通インフラの推進力である。その意味では、ガソリン車と変わらない大きさの燃料電池車では、未来の交通インフラの象徴としては不十分である。そして、それはドアを越えて部屋に入って来られるものでなくてはならない。部屋から部屋未来の交通インフラのベースは電動車椅子である。高齢者や身体に不自由を抱えている人に優しいものは、健常者にも優しい。現状の車椅子と違って、もっとアクティブな仕様も含まなければならない。生まれたら車椅子がプレゼントされ、成長に合わせて車椅子が変形する。子供時代から聞いている音楽、見た景色を全て記録する。そして椅子は変形する。食事も、仕事も、映画鑑賞も、休憩も最適な角度で人体を支える。もちろん、フラット化してベッドにもなる。たとえば、このような想定で開発されたものが2005年の愛知万博にトヨタ自動車から出展された「i-unit」(図6)である。もう少し、この未来の交通インフラを考えて行こう。電動車椅子は車輪付きだから、どこでも行ける。屋内だけの「部屋から部屋」ではない。世界中の「部屋から部屋」である。交通インフラのベースが電動車椅子である。この椅子のまま外に出られて、バスに乗り、列車に乗り、飛行機に乗れなければならない(図7)。何に乗っても自分に最適化された座り心地が最高な椅子を使える。それも、座り心地だけでなく、好みの音楽も、画像も、空調も、アロマも全て承知の電動車椅子である。車椅子はビルのインフラベースとしても面白い。椅子はエレベータに乗れなければならない。そこからが始まりである。エレベータの駕籠に乗せるだけでなく、椅子を駕籠にする発想も出てくるだろう。現在の駕籠単位ではなく、椅子単位なら搬送の自由度が大きくなる。10人乗りのエレベータのスペースを7人分の椅子の移動スペースに置き換えれば、一人一人がもっと自由にフロアを移動できるようになる。もっとも、椅子は上下だけなく平面移動も自動でできる。ビルという三次元空間を上下左右に前進後進。一台の椅子が自由に自動で動き回れる。利便性も柔軟性もきめ細かさも倍増する。これでなければ、消費者はエネルギー革命を支持しない。今、電動車椅子という要素の開発とそれを活かせるインフラ整備が望まれている。026Civil Engineering Consultant VOL.265 October 2014